中国の習近平国家主席は28日、大阪で開幕した20カ国・地域(G20)首脳会議で「多国間主義」の擁護を強調、新興国や発展途上国の首脳との会談では「反保護主義」での結束を演出し、自国第一主義を掲げるトランプ米政権を牽制(けんせい)した。貿易協議の仕切り直しを目指す米中首脳会談を29日に控え、多数派工作を通じて交渉を優位に進めたい思惑がにじむ。
中国外務省によると、習氏はG20サミットで米国を念頭に「保護主義や一国主義が蔓延(まんえん)し、世界経済のリスクと不確定性が顕著に高まっている」と指摘した。一方で中国経済について、さらなる市場開放や輸入拡大、非関税障壁の解消、知的財産権保護の強化などを打ち出し、経済の構造改革を求める米国に配慮する姿勢も示した。
また習氏はG20開幕に先立ち、南アフリカのラマポーザ大統領やエジプトのシーシ大統領、セネガルのサル大統領らアフリカの3カ国首脳らと会談。終了後に記者会見した中国外務省の戴兵アフリカ局長によると、各国首脳らは「旗幟(きし)を鮮明にして多国間主義の堅持と自由貿易体制の維持、一国主義と保護主義への反対」を表明し、同会談が「多国間主義の擁護を伝える強いシグナル」(戴氏)になったと語った。
習氏はこの日の新興5カ国(BRICS)首脳会議でも「構成国は多国間主義を揺るぎなく支持し、保護主義に反対しなければならない」と訴えた。
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(電子版)は28日までに、関係筋の話として、米中双方は貿易摩擦の解消に向けた協議を再開するため貿易戦争の「再度の休戦」に合意したと伝えた。事実ならトランプ米大統領が発動方針を示している年3千億ドル(約32兆円)の中国産品に対する追加関税の発動は延期される。(西見由章)