シュパッ、シュパッ-。生徒たちがラリーを始めると、シャトルを打つ小気味いい音が体育館に響いた。毎週木曜日の夕方に長居球技場(大阪市東住吉区)で開かれているセレッソ大阪のバドミントンスクール長居校。1992年バルセロナ五輪に出場した岩城ハルミさん(54)がスクールマスターを務め、日本代表経験などがある専門コーチ数人がきめ細かく指導する。目指しているのは「世界で活躍できる選手の育成」。Jリーグのクラブとタッグを組んでのスクール開校には、「王国復活」を目指す大阪バドミントン界の強い願いが込められている。
かつて大阪は日本屈指の「バドミントンどころ」だった。女子の三洋電機やサントリー、男子のNTT西日本が実業団対抗の日本リーグ(現S/Jリーグ)で活躍。中でも、三洋電機は2002~09年にリーグ8連覇を達成するなど、当時のバドミントン界を牽引(けんいん)していた。「オグシオ」の愛称で一世を風靡(ふうび)した北京五輪代表の小椋久美子さん(35)、潮田玲子さん(35)組も輩出。グッズを販売するなど人気面でも突出した存在だった。
三洋電機で監督を務めた経験のある大阪府バドミントン協会の宇治収副会長(69)は「当時の大阪には、指導に熱心な学校もあり、トップ選手を育てるシステムが整っていた」と振り返る。三洋電機ではジュニアスクールを設けたほか、全国からレベルの高い小学生を集めて所属選手と一緒にプレーする合宿も開催。来年の東京五輪でのメダル獲得が期待される桃田賢斗(24)や奥原希望(のぞみ)(24)、山口茜(22)らも合宿に参加していたという。
だが、三洋電機のバドミントンチームは親会社がパナソニックの完全子会社となったのに伴い、11年に名称変更。13年には活動を休止し、所属していた選手らはバラバラになった。
日本リーグの試合も、かつては守口市民体育館など大阪府内で開かれていたが、現在は大阪府バドミントン協会が国際大会「大阪インターナショナルチャレンジ」の開催に力を入れていることもあり、「S/Jリーグ」の試合は行われていない。大阪の地盤沈下を、岩城さんは「トップ選手がプレーするのを間近で見る機会がほとんどなくなった。あこがれの選手や手本にする選手が、遠い存在になってしまった」と嘆く。