「多極世界」へ中国と連携 露、G20で米陣営にくさび狙う

 主要8カ国(G8)首脳会議から追放されたロシアのプーチン大統領は、米国を中心とする世界秩序の打破を目指し、G20の場を最大限に活用する構えだ。プーチン氏は、米国の「一極支配」に代わり、大国が世界の主要問題で決定権を持つ「多極世界」の構築を目指している。中国と手を組みながら、米国と同盟国・友邦の間にくさびを打ち込むことを狙う。

 米中貿易戦争やイラン問題などで、ロシアはことごとく米国と対立する側に立つ。中国とは、今月上旬の習近平国家主席の訪露で「最高水準の戦略的パートナーシップ」を誇示。ロシアは、米国によるイラン核合意離脱を非難し、イランを支援する意向だ。北朝鮮問題では、中国とともに制裁緩和に前向きで、北朝鮮の「体制の安全」を保証すべきだとしている。

 ロシアはその一方、日本との北方領土交渉で態度を硬化させてきた。日米安全保障条約が交渉の障害だとし、日本に揺さぶりをかけている。北大西洋条約機構(NATO)加盟国のトルコには最新鋭地対空ミサイル「S400」の売却を決め、米・トルコの深刻な不協和音を生んでいる。

 約1年ぶりの米露首脳会談では、核軍縮が焦点の一つだ。今年8月に失効する見通しの中距離核戦力(INF)全廃条約に代わる新たな核軍縮の枠組みが話し合われる。ロシアは米国との軍拡競争を避けたいのが本音だが、米国は中国の軍縮参加を求めており、難しい立場だ。(遠藤良介)

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