日本のアート・工芸作品の流通を促進するサイト「B-OWND(ビーオウンド)」が5月に始動し、注目されている。作品を広めたい芸術家と購入したいコレクター、評価するレビュアー(評論家)の3者をインターネット上で直接つなぐもので、取引データを複数のコンピューターで管理し合う「ブロックチェーン(分散台帳)」という技術を導入して信頼性を担保する。中古品でも利益を制作者に還元できる仕組みを作ることで、市場の活性化や海外発信にも期待がかかる。
運営は商業施設や展示会のディスプレーなどを手がける丹青(たんせい)社(東京都港区)。陶芸家の市川透さんや竹工芸家の田辺竹雲斎(ちくうんさい)さんら10人が参加し、今後増員を見込む。同サイトではアート作品や工芸作品を画像、来歴とあわせて紹介。レビュアーの意見を参考にしたうえで作品を購入できる。19日現在、44作品の販売が成立したという。
特徴は、仮想通貨などに導入されているブロックチェーンの活用だ。
情報を複数のコンピューターで共有し相互確認する仕組みのため、改竄(かいざん)が極めて難しく、信頼性を担保できる。同時に「デジタル証明書」を発行し、作品の来歴を正確に記録。業界が長年抱える課題である証明書の改竄などを防ぎ、「開かれた公正なマーケット」を目指す。
石上賢プロデューサーは「アート・工芸の世界では新品よりも、過去の所有者など背景に『ストーリー』のある中古品の方が価値が上がりやすい。アートとブロックチェーンは相性が良く、作品の来歴を透明性を保ちながら一括管理できるのは大きなメリット」と狙いを語る。
アート・工芸作品は一度世に出ると、オークションなどで商品が売買されることが多く、その場合、制作者には利益が還元されない。同サイトでは、中古品の取引でも制作者に取引金額の一部が還元されるシステムを導入。縮小が続く業界の活性化を狙う。
文化庁などによると、2017年の世界のアート市場規模は約6兆7500億円であるのに対し、日本の市場規模は約2400億円にとどまる。同サイトも今は日本語のみだが、今後は英語(来年開始予定)など多言語展開を想定している。
石上さんは「陶器や漆器など、日本の工芸作品は『日本の美』を体現している。作品の魅力を世界に発信し、日本のアート市場の国際的存在感を高めたい」と話している。(本間英士)