日本で上演まれな「三人姉妹」にサラ・ラム主演 3年ぶり英ロイヤルバレエ団公演開幕

来日公演も多く、「私にとって、日本で踊ることは特別なこと」と話すサラ・ラム(酒巻俊介撮影)
来日公演も多く、「私にとって、日本で踊ることは特別なこと」と話すサラ・ラム(酒巻俊介撮影)

 吉田都や熊川哲也ら、日本を代表するバレエダンサーがプリンシパル(最高位ダンサー)として活躍した英ロイヤルバレエ団。この名門の来日公演が21日から始まった。今公演では、プリンシパルのサラ・ラムが、日本では上演機会がまれな「三人姉妹」に主演する。  

(飯塚友子)

 「日本のファンのみなさんは、私がムーミン好きなことをよくご存じ。楽屋口で待ってて、ムーミングッズをプレゼントしてくださるんですよ」

 磁器のような肌に、大きな瞳-と容姿に恵まれ、女優のように表現力豊かな踊りで、日本でもファンの多いラム。素顔はかれんだが、「ロミオとジュリエット」のジュリエットや、「うたかたの恋」のマリーなど、情熱的な悲恋のヒロインも、当たり役にしている。

 今公演では、ロシアの小説家、チェーホフ原作の「三人姉妹」の次女、マーシャを演じる。「ロミオ-」の振り付けで知られる英バレエの巨匠、ケネス・マクミラン振り付けで、日本では上演機会の珍しい作品だ。

 舞台は帝政ロシア期。モスクワから遠く離れた田舎町に暮らす、三人姉妹の閉塞(へいそく)感やあがきが、チャイコフスキーのピアノ曲に彩られ、踊りで表現される。

 ラム演じるヒロインは、退屈な中学校教師と結婚しているものの、モスクワから来たヴェルシーニン中佐(ワディム・ムンタギロフ)と思いを寄せ合う。2人の激情あふれる「愛の告白のパ・ド・ドゥ(男女2人の踊り)」や、切ない情感が胸に迫る「別れのパ・ド・ドゥ」が眼目だ。せりふが聞こえてきそうな、ドラマチックな踊りを堪能できる。

 ラムはヒロインについて「父親に先立たれたばかりの三姉妹は、モスクワに戻ることを夢見ており、マーシャはヴェルシーニンに夢中になる。彼女の内面の葛藤を単なる悲劇にせず、またふしだらな女性に見えないよう演じるのは、大きな挑戦」と語る。

 相手役で組むムンタギロフとは過去、今作を踊った経験がある。ムンタギロフは新国立劇場バレエ団への客演も多く、日本でもおなじみの存在で、ラムはムンタギロフに全幅の信頼を置いている。

 「ヴェルシーニンを演じるワディムは、本当に素晴らしい。本来の彼は穏やかで、とても控えめだが、2人のパ・ド・ドゥでは驚異的な奔放さで演じた。この踊りは2人の情熱と感情の極地で、それを抑えて表現しなければならない。でも過去の舞台で、抑えきれない情熱がほとばしる瞬間がありました」

 「マーシャは自分の未来が変えられないことを知っている。終幕では自暴自棄になり、自分の運命をあきらめ、そしてそれを受け入れます」。ダンサーとしての円熟期を迎え、大人の女性の複雑な内面を、繊細な動きで表出させる。

 ラムはさらに、バランシンがビゼーの交響曲に振り付けた「シンフォニー・イン・C」でも、第2楽章を踊る。「これまで第1楽章と第4楽章は踊ったことがありましたが、第2楽章はこの日本公演が初めて。透明感のある美しい楽章ですが、女性ダンサーのソロの踊りにはおちゃめな部分があり、最後は深い瞑想(めいそう)も。自分が美の行為を創造する一部であり、大きな何かに仕えている感覚を覚えます」

 プリンシパル総出演で、群舞の美しさも堪能できる作品。レパートリーの多様さからも、英ロイヤルバレエ団の現在を感じさせる来日公演になりそうだ。

 公演は26日まで、東京文化会館(東京都台東区)で「ドン・キホーテ」。29、30の両日は神奈川県民ホール(横浜市)で「ロイヤル・ガラ」。「三人姉妹」と「シンフォニー~」はガラ公演で上演。03・3791・8888(NBS)。

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