河村直哉の時事論

挑発と懐柔 北朝鮮外交の原型をソ連に見る

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)・朝鮮労働党委員長がトランプ米大統領に「美しい書簡」を送ったのだという。「温かくすてき」(トランプ氏)なものだったとか。資本主義国(自由主義国)に対する共産主義国の、硬軟を使い分けた外交を踏襲しているとみられる。

資本主義国との対立

食糧難や物資不足が伝えられる一方で、北朝鮮は5月に短距離弾道ミサイルを発射した。そして今回の書簡である。挑発と懐柔のパターンが繰り返されている。

これは旧ソ連に原型があるといってよい。1991年にソ連が消滅して30年近くになる現在、この共産主義の総本家の外交を点検しておくことには意味がある。改革開放路線で市場経済を取り入れた中国より、共産主義国の行動パターンを見るうえで参考にしやすい。

そもそも国家観や政治思想において、北朝鮮は共産主義イデオロギーに根ざしている。

「朝鮮の革命家は(略)思想の力によって帝国主義の強敵をうちやぶり、富強な社会主義を建設しました」「一九九〇年代の社会主義防衛戦で、われわれは、帝国主義連合勢力の孤立圧殺策動からわれわれの思想と制度を守りぬくという歴史の奇跡を生みだしました」

これらは2014年の朝鮮労働党第8回思想活動家大会での、金正恩委員長の演説である。「社会主義」は、ここでは共産主義と同義とみなす。その用語法や思考のスタイルはほとんど1世紀前の、ロシア革命を指導したレーニンのそれに近い。

「帝国主義戦争の苦役の鎖を粉砕した最初の国がわが国であったのである。(略)われわれは、帝国主義の完全な打倒をめざす闘争の旗を全世界のまえに掲げた」(「アメリカ労働者への手紙」1918年)

レーニンにおいて、帝国主義とは資本主義が発展したものであり、帝国主義戦争は「侵略的、略奪的、強盗的」である(「帝国主義」)。それを乗り越えるのが共産主義ということになる。

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