話の肖像画

作家・江上剛(65)(1)「呪縛」の言葉に記者が動いた

問題の不正融資について知ったのは前年の8年4月。ある記者が「小甚(こじん)ビルディング」という会社の謄本を持ってきたんです。汚い謄本でね。総会屋の弟の名義で、40億円に上る融資をしていた。「総会屋のビルに億単位で融資するなんておかしいと思いませんか」と聞かれたけど、形式上は返済されているので「別にいいんじゃない」と言いました。内心はまずいなと思いましたが。

この年の11月には別の総会屋への5600万円の融資が産経新聞にすっぱ抜かれ、記者会見に約200人の記者が集まった。「5600万で200人くるんだから、40億だったらどれだけの記者がくるんだろう。銀行がつぶれる」と思いました。融資は実際には延べ400億円くらいはあったと思います。総会屋ばかりではなく暴力団などです。焦げ付いても怖くて回収努力を怠っていたんです。バブル期は銀行員が襲われる事件が多かったですからね。

〈家宅捜索から3日後に開いた記者会見。近藤克彦頭取(当時)は、総会屋との関係を断ち切れなかった理由として、「呪縛が解けなかった」と説明した〉

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