4月に30歳となったが強さに陰りは見られない。レスリングの全日本選抜選手権男子フリースタイル86キロ級で高谷惣亮(ALSOK)が優勝し、世界選手権代表を決めた。昨年12月の全日本選手権から新階級で連勝し「86キロ級は僕の階級」。大きく自信を深め、自身3度目の五輪へ前進した。
決勝では「腰が浮いているのが見えた」と開始早々にタックルから2点を先制。足すら触れさせない鉄壁の防御で相手をいなし、第2ピリオドには4点を奪って8-0。昨年の全日本選手権準決勝では1点差で退けた松坂に今度は圧勝した。
昨年の世界選手権は79キロ級で出場したが、東京五輪実施階級の86キロ級に転向した。スピードを生かした代名詞のタックルに加え、相手の攻撃をかわしてからのカウンターも新たな武器に。「海外の86キロ級の選手は74キロ級より遅い」と今年3月のワールドカップでは3勝1敗と手応えを得た。
端正な顔立ちから20代は「タックル王子」と呼ばれたが、三十路を迎え「今はタックルおじさん」と自嘲気味に笑う。それでも「年を取るたびに進化していく。ロンドン、リオデジャネイロの頃より強い自信がある」と日本のエースの風格を漂わせた。(岡野祐己)