主張

尖閣沖に中国公船 正常な軌道でない証しだ

 尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域の情勢が荒れ模様になっている。

 中国海警局の公船が連続62日間も尖閣周辺の領海外側の接続水域を航行したり、領海に侵入したりしているためだ。平成24年9月に政府が尖閣を国有化して以来、最長となっている。

 尖閣海域を徘徊(はいかい)する中国公船は4隻で、機関砲を搭載する船もある。今月10日にも領海に侵入したが、5月の侵入は4回に及んだ。月1、2回だった昨年よりも頻度が増している。海上保安庁の巡視船が、領海に近づかないよう警告しても従わない。

 中国は、隙あらば尖閣諸島を奪い取ろうと狙っている。その姿勢が露骨である以上、日本は侵略への警戒を強め、固有の領土と領海を守り抜かなければならない。

 中国海警局は昨年7月、軍の最高指導機関「中央軍事委員会」直属の武装警察部隊に編入された。白地に青いラインが描かれた海警局の公船は、海保の巡視船と似通っているが役割は異なっている。中国が尖閣を占領しようとする場合、中央軍事委の指揮下で軍、海警局、海上民兵が作戦行動に出てくる恐れがある。

 今月11日には、中国海軍の空母「遼寧」など6隻の艦隊が、沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を通過し、太平洋へ入った。

 尖閣を含む南西方面の海域の厳しい情勢を見るにつけ、疑問に感じるのは、安倍晋三首相や河野太郎外相が、日中関係について「完全に正常な軌道に戻った」と繰り返している点だ。中国側要人も同様の認識を表明している。

 中国は今、「新冷戦」ともいわれる米国との対立に困り果て、局面打開のため、外交上では対日接近を図っている。

 ところが、尖閣方面では強硬姿勢を改めない。これを見過ごして、日中関係が正常な軌道にあると浮かれていては中国の思うつぼにはまるだけだ。

 中国による尖閣への上陸占拠の懸念が拭えない以上、その抑止に極めて有効な陸上自衛隊の尖閣配備を実現すべきである。

 外交上の対応も欠かせない。安倍首相は11日、今月下旬の日中首脳会談について「習近平国家主席と手を携えて、日中の新時代を切り開いていきたい」と語った。習氏との会談では、尖閣周辺での中国の傍若無人な行動を咎(とが)めるなど全力を尽くしてもらいたい。

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