日雇い労働者の街として知られる大阪市西成区の通称「釜ケ崎」(あいりん地区)で、井戸を掘るプロジェクトが進んでいる。アフガニスタンで井戸掘りに従事した元NGOメンバーと、日雇い労働者として地面を掘っていた「釜ケ崎のおっちゃん」が講師となって若者らと汗を流す。関係者は「蛇口をひねれば当たり前に出てくる水の大切さを多くの人に感じ取ってもらえれば」と願っている。(吉国在)
「スコップおろしまーす」。5月22日昼過ぎ、同区の歓楽街・飛田新地近くにあるゲストハウスの庭で、元日雇い労働者の男性や若者らが地面に掘った穴をのぞき込み、元気な声を張り上げた。スコップやバケツ、滑車を使って手作業で直径1・2メートル、地下約3メートルまで掘り進める予定だ。
「釜ケ崎のおっちゃんたちの豊富な人生経験と知恵からともに学び合う」ことをコンセプトに、詩や哲学などの講座を一般の人を対象に定期的に開く「釜ケ崎芸術大学(釜芸)」が4月から始めた。
体験を通じて、生きるために欠かせない水の大切さを学ぶ今回の講座は、釜芸を運営するNPO法人「こえとことばとこころの部屋(ココルーム)」代表の上田假奈代(かなよ)さん(49)が温めてきた構想だ。釜芸の目的の一つは、講師を務めるおっちゃんたちから学ぶことだったが、実際には大学教授らが講師になることが多かった。「井戸掘りならば地面を掘ってきた労働者が先生になれると思った」と上田さん。
友人で、国際NGO「ペシャワール会」の一員として干魃に苦しむアフガンで800本以上の井戸掘りに携わった蓮岡修さん(46)=京都市=に協力を依頼した。