仏ルノーが株主総会での議決を棄権する意向を示した日産自動車の企業統治(コーポレートガバナンス改革案には「ゴーン体制脱却」と同時に、平成31年3月期決算で最終利益が半減するなど厳しい業績の立て直しに向けた第一歩の意味もある。新体制をめぐり仏ルノーとの溝が深まれば、ガバナンス改革が停滞するだけでなく業績改善も遅れ、株主からの批判を招く恐れがある。
改革案は外部有識者らによる「ガバナンス改善特別委員会」が約2カ月議論した報告書を基にまとめられており、日産関係者は「業績回復が最優先だと(ルノーと)一致しているのに、こうした動きは理解しがたい」と話す。
ただ、両社の関係に亀裂が入れば技術開発などで日産に頼るルノーにも痛手で、日産社内には「あくまで経営統合に向けた政治的な威嚇ではないか」との声もある。持ち株会社方式で対等性を強調した経営統合案に応じない日産にしびれをきらし、株主総会前に影響力を誇示した-というわけだ。
また、再浮上したFCAとの統合協議での駆け引き材料との見方も。当初の協議は日産の意向に配慮した結果、破談しており、今回は強硬姿勢で妥協を引き出そうとする可能性がある。(今村義丈)