立憲民主党は10日の参院決算委員会で、95歳まで生きるには夫婦で2000万円の蓄えが必要と試算した金融庁金融審議会の報告書をめぐり安倍晋三首相らを厳しく追及した。参院選を間近に控え、12年前の第1次安倍政権退陣につながった「消えた年金」問題の再現を期待したのは明らかだ。一方、国民民主党は「提案型」に終始し、立民と一線を画した。
「国民は『100年安心』が嘘だったことに怒っている。『2000万円をためるとはどういうことだ』と憤っている」
立民の蓮舫副代表は決算委でこう述べ、報告書の内容が平成16年の年金制度改革で政府・与党が年金制度を「100年安心」とアピールしたことに反すると強調した。「そもそも年金不信を生んではいけない」とも主張。12年前の参院選で与党大敗の要因となった「消えた年金」と同等の深刻さだと訴えた。
蓮舫氏は約35分間の持ち時間のほとんどを報告書の追及に充てた。終盤国会になってようやく政府・与党を責める材料を得たことへの高揚感の表れともいえ、記者団に報告書が「参院選の大きな争点になる」と語った。共産党の小池晃書記局長も「『自己責任で貯金せよ』とは国家的詐欺に等しいやり方だ」と政府を糾弾。記者会見では「年金問題は悪夢としてよみがえってくるのではないか」と述べた。
旧民主党系ながら、立民と対照的だったのが国民民主党だ。大塚耕平代表代行は消費税に関する国民からの電話相談が同党の働きかけで無料になったと言及した上で、首相に「(年金に関する)問い合わせも無料にすべきではないか」と提案した。首相は「検討させていただきたい」と応じ、委員会室はヤジがこだました蓮舫氏の質問時とは異なり、静けさに包まれた。
国民民主は「正直、偏らない、現実的な政治」を志向している。年金は、野党が政権に就いても現実的に対処すべき課題であり、大塚氏は努めて冷静に振る舞っているように見えた。
自民党の10日の役員会では「野党に騒がれると過去の年金の話が想起されてしまう。丁寧に対処すべきだ」との意見が出た。ただ、ある党幹部は記者団を前に淡々とこう述べた。
「報告書の話はこれ以上、広がりませんよ。柳の下にドジョウは2匹もいません」(内藤慎二、今仲信博)