安倍晋三首相は10日の参院決算委員会で、95歳まで生きるには夫婦で2000万円の蓄えが必要とする金融庁金融審議会の試算に関し「不正確であり、誤解を与えるものだった」と述べた。同時に、公的年金の積立金運用益が6年間で44兆円に上ったとして「公的年金の信頼性は、より強固なものとなったと考えている」と説明した。
首相は、試算が家計調査の結果に基づく単純計算で「老後に月5万円、30年で2000万円の赤字」と表現したことを「誤解」と釈明した。あくまで公的年金が中心であり、試算は単純に平均値を示したに過ぎないとの認識を示した形だ。
立憲民主党の蓮舫副代表は「国民は『100年安心』が嘘だったと怒っている」と追及。首相は「そうではない」と反論し、公的年金制度の持続性を強調したが、野党は「年金問題」として夏の参院選の争点とする考えだ。
麻生太郎副総理兼金融担当相は、同審議会の報告書に関し「冒頭の一部、目を通した。全体を読んでいるわけではない」と語った。
首相は、国会で憲法改正の議論が進まない現状について「議論すらしないのはどうかということは、いずれ国民の皆さんが判断することになる」と述べ、改憲論議に応じない野党側を牽制(けんせい)した。衆参両院の憲法審査会について「開く、開かないは国会が決めることだ」としつつ、「憲法審は重要な役割を担っており、予算もかかっている」と主張した。