8日に開催された20カ国・地域(G20)貿易・デジタル経済相会議では、人権に配慮した人工知能(AI)の原則や国境を越えた自由なデータ流通の構想などを柱とするデジタル経済閣僚声明が打ち出された。AIやデータを活用したデジタル経済は世界で急速に拡大しており、国際的なルール整備が急務だ。(万福博之)
「『信頼性のある自由なデータ流通』という言葉が声明にしっかり入ったことの意義は大きい」。世耕弘成経済産業相は8日の会議後の会見で、こう述べた。
あらゆるモノがインターネットにつながるIoTは急成長し、調査会社の米IDCの予測では、2019年の世界市場は前年比約15%増加し、今後も2桁の成長率が続く。個人や産業に関する大量のデータが蓄積され、国境を越えたやり取りはさらに活発化する。
だが、特定の国がデータを抱え込んだり、セキュリティーが不十分だったりすれば、データを活用した経済成長は阻害される。これに対し、日本は信頼に基づき国家間の自由なデータ移転を認めるルールが必要と提唱。理念を共有できたことで28、29日のG20首脳会議では国際ルールの新たな枠組みづくりに踏み込む。
一方、あらゆる産業で導入が加速するAIは負の側面も指摘され、開発者らが守る国際的なルールを求める声は強い。経済協力開発機構(OECD)は先月、人とAIの共生に向けた原則を採択したが、G20ではOECD非加盟国の中国などにも共有され、ルールづくりで前進した格好だ。