都内の免許返納 池袋暴走事故後、最多に 急増も決断阻む「過信」と「不安」

■返納率に地域差

身近な移動手段を手放すことも返納のハードルを高めている。千葉市の無職の男性(75)は返納が必要だと理解はしているが、家族に促されてもお茶を濁し続けているという。趣味は月2回のゴルフで、友人たちを車に乗せ、自宅から数十キロ先のゴルフ場に向かう。「車がなくなって交友関係が途絶えるのが怖い」

ニッセイ基礎研究所の村松容子准主任研究員(健康医療)は「返納の促進は事故防止に重要だが、積極的な外出を呼びかける高齢者福祉との間でジレンマに陥っている」と指摘する。

村松氏は警察庁の運転免許統計を使って、30年の75歳以上の返納率を都道府県別に計算。最高値の東京(8・1%)と最低値の高知(3・7%)で4ポイント以上の差が出た。「公共交通網が乏しい地方で不安を払拭する十分な効果を得られていないのが現状だ」(村松氏)

数年後には、人口が多く、免許保有率も高い団塊の世代(昭和22~24年生まれ)が後期高齢者になり始める。追手門学院大の東(ひがし)正訓(まさのり)教授(交通心理学)は「免許更新時の検査で認知機能に加え、手足を十分に動かせるかを確認する身体能力検査を追加するなどの検討も早急に必要になるだろう」と話している。(玉崎栄次)

■海外でも問題に

高齢ドライバーの安全対策は海外でも課題となっており、一定の年齢に達した高齢者全員に認知機能を調べる受診の義務化、運転できる時間や場所を制限する限定条件付き免許制度などが導入されている。

日本では、75歳以上に免許更新時の認知機能検査が行われる。記憶力や判断力が低いと判定されると、医師の診察を受け、認知症と診断されれば聴聞などの手続きの上で運転免許が取り消し・停止される。一方、警察庁の調査(平成29年)によると、アイルランドやスイスではより厳しく、70歳以上の全員に受診を義務付け、認知症の場合は免許取り消しとなる。

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