主張

新交通システム 安全確保に「自動」はない

 「安全」で知られた列車に何が起きたのか。原因解明と再発防止を急がなくてはならない。

 無人自動運転で横浜市南部を走る新交通システム「シーサイドライン」が逆走事故を起こした。車両ドアが閉まった直後に本来の進行方向とは逆に走り始め、約26メートル離れた車止めに激突した。乗客14人が重軽傷を負った。

 事故車両と駅には、それぞれ自動列車運転装置(ATO)が設置されていた。駅側の装置には異常が見つかっておらず、車両側の装置に不具合が生じた可能性などが指摘されている。

 運営会社は運転士による手動運転で運行を再開した。事故原因が判明していない段階での再始動は万全なのか。安全確保が最優先だということを銘記してほしい。

 無人の自動運転システムは東京の「ゆりかもめ」を含めて全国で運行されている。JR東日本も山手線の自動化について実証実験を始めた。そうした中での事故だけに、安全という根本を揺るがす深刻な事態と受け止めるべきだ。

 事故は1日夜、横浜市磯子区の新杉田駅で発生した。同駅は折り返しの始発駅だ。事故直前に駅側の装置が進行方向の切り替えを指示し、車両側から切り替えが終わったとの信号があったという。その直後に列車が逆走を始めて車止めに衝突した。衝突前に異常を知らせる表示はなかった。

 車両側の装置がどのように信号を認識し、それが動力装置にどう伝わったかなどを解明する必要がある。今回のシステムは逆走を想定していなかったというが、今後は、逆走時の安全装置の設置なども検討すべきだろう。

 無人で自動運転する新交通システムは高架などの専用軌道を走行する仕組みだ。ゴムタイヤの車輪を備えて急カーブでも走行可能である。振動や騒音が少なく、都市部の住宅地でも運行できるのが特徴だ。運転士などの人件費を抑えられるメリットもある。

 他の新交通システムの利用者らにも不安が広がっている。構造的な欠陥を抱えていれば、新たな事故を招く恐れもある。自動運転の安全を徹底するため、官民で再発防止に全力を尽くすべきだ。

 どんな自動運転システムも、導入すれば安全が自動的に確保されるわけではない。大切なのは、人による管理と監視の徹底だということを忘れないでもらいたい。

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