朝晴れエッセー

心は青年ライダー・6月4日

今から40年ほど前、瀬戸大橋も明石海峡大橋もしまなみ海道もない当時、京都で大学生活を送っていた私は遠距離恋愛を成就させるためにオートバイを駆って、よく愛媛県へと出かけた。

オートバイは、夏は暑く、冬は寒く、決して全天候型の乗り物とは言い難いが、四輪では決して得られない車との一体感があり、何よりも彼女との距離を縮めてくれる唯一無二の移動手段であった。

大学を卒業して社会人となり、念願かなって彼女と華燭(かしょく)の典を挙げると、経済的な理由からオートバイはスケールダウンして通勤の足となった。就職後、35年が経過した3年前、子供も巣立ち、家のローンも完済したのを機に、若かりしころに果たせなかった夢が頭をもたげ始めた。結局、退職金を担保に妻がわが家をリフォームするために貯(た)めていた金を流用して念願のビッグバイクを購入した。

その夢とはオートバイで北海道の大地を走り抜けることであったが、大学3回生のころ、その資金稼ぎのために続けていたアルバイト先からの帰途、交通事故の当事者となり、資金を失って見果てぬ夢となっていた。

今春、勤務先を定年退職し、今は夏の北海道ツーリングを実現するための準備に余念がない。身体は中年特有のオッサンの体形になってしまったが、心はいまなお青年ライダーのままである。

小越 良夫 60 京都府向日市