フランス中道右派党首が辞任 「極右接近」でつまづき 欧州議会選で惨敗 保革中道、瓦解止まらず

欧州議会選でポピュリズム勢力伸長 揺れるEU
欧州議会選でポピュリズム勢力伸長 揺れるEU

 【パリ=三井美奈】フランスの中道右派「共和党」のロラン・ボキエ党首(44)が、先月の欧州議会選での歴史的惨敗を受け、辞任を表明した。極右「国民連合」の伸長にあおられ、強硬な移民対策を訴えたことが裏目に出た。左派陣営も分裂が進み、左右中道の瓦解(がかい)が止まらない。

 欧州議会選の得票率では、国民連合が23%、マクロン大統領の与党連合が22%で激しく競い、共和党は8%で過去最低を記録した。「マクロン対ルペン」の一騎打ちに埋没した。

 共和党内からは来年の地方選を前に、党首の引責辞任を求める声が噴出。マクロン政権の元共和党閣僚が仏紙のインタビューで、同党の首長らに「脱党せよ」と呼びかけるなど、混乱が広がっていた。

 共和党は社会党とともに戦後の二大政党制を支えたが、2017年の大統領選で共和党候補は新党を率いるマクロン大統領、ルペン党首の双方に敗北。新党首になったボキエ氏は右傾化路線で党再生を狙った。「大量移民は欧州文明への脅威」と発言。移民受け入れ削減をめぐり「国民投票をやる」と訴えた。

 極右から票を取り戻す戦略だったが、党内右派の国民連合への流出を止められなかった上、党内中道派の反発も招き、マクロン陣営に支持を奪われた。仏紙フィガロの調査によると、17年の大統領選で共和党候補に投票した人の約4割が、欧州議会選で国民連合か与党連合に投票した。

 マクロン政権にはフィリップ首相、ルメール経済・財務相ら、共和党中道派からのくら替え組が多い。共和党は存在意義を示すのに苦心し、「右派はボロボロ」(ルモンド紙)の状態に追い込まれた。ボキエ氏が2日、民放テレビで辞任を宣言すると、ルペン氏はツイッターで「共和党員に手をさしのべる」と発信し、党分裂をあおった。

 欧州議会選で左派陣営は、環境政党「欧州エコロジー緑の党」が13%を得票して首位に立ち、前与党の社会党は6%に低迷した。保革二大政党は、再生への道が見えない。

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