外交安保取材

日米首脳の「かが」そろい踏みは「中国が最も見たくない画」

トランプ対策の狙いも

「かが」乗艦にはトランプ氏へのメッセージも含んでいた。

政府は昨年末に改定した新たな防衛計画の大綱で「自らが果たし得る役割の拡大」を掲げた。戦後の防衛政策は米国頼みの色合いが強かったが、自国防衛と国際社会の安定のため、より積極的に責任を果たしていくとの決意からだ。

中国の台頭が著しい中、自衛隊の能力強化は米国の東アジア戦略にも貢献する。さらに、空母改修後に運用するF35Bは米国から購入するため、トランプ氏が不満を持つ対日貿易赤字の解消にも一役買うことになる。「かが」視察は、安全保障や貿易で片務性や不均衡を嫌うトランプ氏に、同盟相手としての日本の価値を再認識させるためでもあった。

日本側のメッセージは伝わったのか。トランプ氏は日米の隊員を前に、日本が米国からF35戦闘機を105機購入することや「かが」を空母化改修することに触れ「米国の安全保障をも向上させるもので、安倍首相の尽力に感謝したい」と満足げに語り、帰国の途についた。

政府がトランプ氏をいずも型に招待したのは今回が初めてではない。平成29年11月に来日した際にも、日本側は「いずも」への乗艦を打診したが、スケジュールが合わずに見送られた。「かが」乗艦は2年越しで結実した成果でもあった。

安倍首相が自らエスコートしたのはトランプ氏が初めてだが、いずも型に乗艦した外国首脳としては3人目だった。

平成29年8月には、来日した英国のメイ首相が「いずも」を視察している。メイ氏を案内した当時の小野寺五典防衛相は、大日本帝国海軍巡洋艦「出雲」が英国製で、日露戦争にも参加した歴史を紹介。「日露戦争はそのおかげで勝つことができた。第一次世界大戦では英国を助け、さまざまな船をエスコートした。ちょうど百年前だ」と語りかけた。

英国はその後、北朝鮮による「瀬取り」の監視のため海軍艦艇を派遣することになるが、この時の視察が大きく貢献したとされる。

フィリピンのドゥテルテ大統領は「いずも」と「かが」の両方に乗艦している。いずれもフィリピンのスービック港に寄港した際に実現した。フィリピンは中国が軍事拠点化を進める南シナ海の最重要沿岸国で、日米サイドとしてはなんとしても引きつけておかなければならない存在だ。いずも型への乗艦を通じて連携を確認すると同時に、中国への牽制を示す狙いがあった。

いずも型への要人の乗艦は今後も実施されていくだろう。単なる親善ではなく、その裏には必ず何らかのメッセージが込められている。

(政治部 石鍋圭)