日本の伝統「和食」に欠かせない調味料、みそ。食の欧米化などにより、家庭でのみそ離れが指摘される中、都内で唯一といわれるみそ蔵が練馬区の西武池袋線中村橋駅近くにある。創業から7代続く「糀屋三郎右衛門(こうじやさぶろうえもん)」は、みその命とされる「こうじ」づくりからほとんどの工程が手作業。昔ながらの伝統の味を、今も守り続けている。(松崎翼、写真も)
糀屋三郎右衛門は、明治中期に茨城県で創業。昭和14年に現在の場所にみそ蔵を構え、現在は白米、玄米、麦の各種みそのほか、数代にわたって研究を重ねて出来上がったこうじ「雪の花」など約10商品を手掛け、通販サイトでも販売している。
7代目の辻田雅寛さん(57)は、守り続ける伝統の味について「特徴がないのが特徴。どんな人にも親しみやすい味になっている。手作りみそは、どうしても季節によって少し味が変化することもある。その違いを楽しんでもらえるとありがたい」と力を込める。
商品の製造に機械はほとんど使用していない。辻田さんは「同じ質で大量に生産するのは機械製造の方が向いている」と機械を用いたみそづくりに理解を示す一方、「ある程度経験を積めば、手作りは小回りがきく。気温や湿度などに合わせて、熟成の期間の長さや水分を含ませる量を臨機応変に変えられる」と強調する。こうじやみそづくりの製造過程では、手の感触、香りなどで確認していくことが重要だからだ。
同店では、健康食品ブームが起こる以前から無添加・天然醸造にこだわってきた。選び抜いた国産原料を使用し、コストや手間はかかるが、「角のないやさしい味に仕上げようとすると、添加物などが入る余地はない」(辻田さん)。一般的なみそに比べ、同店の商品は少し値は張るが、手作りだからこそ生み出せるこだわりの味を求めて、全国各地から取り寄せられている。