世界遺産や名所・旧跡、伝統文化…。聖火が巡る場所は、地域で愛されていることが一つの基準となった。世界にその魅力を発信することで、五輪後を見据えて、外国人の来訪を促す狙いもある。
今夏に世界文化遺産登録が確実な「百舌鳥(もず)・古市古墳群」(堺市など)が選ばれた大阪府。令和7(2025)年には国際博覧会(万博)も予定されている。大阪での初日のゴールは、昭和45(1970)年前回万博の会場となった「万博記念公園」(吹田市)で、担当者は「太陽の塔はぜひ見てほしい」とアピールする。
広島では「平和記念公園」が選ばれた。県の担当者は「2020年は被爆から75年の節目。それまで草も木も生えないといわれてきたが、復興した広島から世界平和の願いを発信したい」と語る。
被爆した広島県原爆被害者団体協議会の箕牧智之(みまき・としゆき)理事長代行(77)も「世界へ平和を訴える平和記念公園を聖火が走るのは、被爆者にとって非常にうれしい」と歓迎した。
地元の伝統文化の発信をもくろむ自治体も。徳島県の担当者は「阿波踊りをどう登場させるかがポイント。期待されていると思うので、演出を練っている」。徳島の代名詞といえる踊りだけに、登場シーンは機密事項だという。
ただ、国際オリンピック委員会(IOC)の関係者は「場所もよいが、やはりランナーが主役。その土地にストーリーがある人に走ってもらいたい」と願っている。