両陛下、初の地方ご訪問 愛知県で七宝焼の施設ご見学

 天皇、皇后両陛下は1日、第70回全国植樹祭の式典出席などのため、1泊2日の日程で愛知県入りされた。両陛下が即位後、地方を訪問されるのは初めて。

 両陛下はこの日、伝統工芸品「尾張七宝(しっぽう)」の施設を見学するため、あま市に足を運ばれた。市内の沿道には歩道を埋め尽くすように人垣ができ、市民らが両陛下のご訪問を歓迎した。

 施設では、天皇陛下が明治時代に作られた高さ約1・5メートルの花瓶について「見事ですね」と関心を示された。地元の小学生らが七宝焼のキーホルダーなどを制作する様子も視察し、皇后さまは腰をかがめ「いいのができるといいですね」と笑顔で語りかけられた。

 2日は尾張旭市で開催される植樹祭の式典に両陛下で臨席し、陛下はお言葉を述べられる。また、両陛下はスギなどの苗木をお手植えされる。午後に岡崎市の医療療育センターを訪れ、入院する重症心身障害児の院内学級などを慰問し、夜に帰京される。

 植樹祭は昭和25年の第1回式典から昭和天皇と香淳皇后が出席。平成に入った第40回からは上皇ご夫妻が臨席を続けられ、代替わりを機に両陛下が引き継がれた。

 ■「国民の中に」熱心にご交流

 愛知県で開催される全国植樹祭式典などのため、即位後初めて地方を訪問した天皇、皇后両陛下は、視察先の施設などで人々と言葉を交わし、熱心に交流された。天皇陛下は今年2月の誕生日会見で、皇太子時代から心がけてきた「国民の中に入り、国民に少しでも寄り添うこと」を即位後の「自分の活動の大きな柱」にする考えを示しており、理想の象徴像に向けた実践を始められた。

 1日午後、愛知県の伝統工芸品「尾張七宝」の施設訪問を終えた両陛下は、見送りに集まった地元住民らに歩み寄り、約10分間、交流された。

 「とてもいい施設ですね」「子供たちが本当に楽しそうで」。施設の感想を述べられた陛下。皇后さまはクラブでソフトボールをしているという男子中学生に「私もソフトボールをやっていました。ポジションは?」とにこやかにご質問。両陛下とも「暑い中お待ちになっていただいて」と気遣われる場面もあった。ご交流は予定にない行動で、出発時間は当初の予定より約5分遅れた。

 沿道にも大勢の人々が集まったため、御料車(ごりょうしゃ)はスピードを落として進み、両陛下はにこやかに手を振って応えられた。

 こうした国民との交流は、上皇ご夫妻が在位中に大切にされてきた、国民とともに歩む象徴像とも重なる。側近は「即位から1カ月たち、お疲れもあるが、人々から歓迎を受け、交流されることは両陛下にとって励みになる」と話した。

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