高見国生の認知症と歩む

(16)「予防策の推進」に違和感

 前回のコラム掲載と同じ17日の本紙に「70代認知症 1割減へ 大綱素案、初の数値目標」という記事が載り、テレビのニュースでも何度も取り上げられていました。「それは良いことだ」と思った方も多いと思いますが、私は、「ウン?」と思ったので予定を変更して今回はそのことについて触れます。

 記事によると、政府は認知症対策の強化に向け新たな大綱の素案を示し、「70代での発症を10年間で1歳遅らせる」と明記。これにより70代患者が1割減るとしてスポーツ教室や教育講座の活用など予防策の推進を掲げた、というものです。

 「ウン?」と思った第一の理由は、「予防策の推進」です。記事にもあるように、「認知症の予防に関する科学的根拠は不十分」なのに、なぜ1割減らすといえるのか。運動や人との交流は健康や生きがい作りには有効ですが、認知症にならないという保証はありません。

 第二の理由は、「10年後に1割減ったことがどうして確認できるのか」ということです。2025年(6年後)には700万人になると推計されていますが、10年後は不明です。10年たったときの認知症の人の数が、1割減ったのかどうかは誰も確かめようがありません。

 予防を研究することは大切ですが、予防を強調しすぎると認知症の人は「予防の努力をしなかった人」になりかねません。60代の夫を介護する女性は、「夫が不摂生だったから認知症になったように思われないか。逆に偏見や不安をあおらないか」と心配しています。

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