朝晴れエッセー

五百円紙幣・5月30日

紙幣が新しくなる。同時に、五百円硬貨のリニューアルも発表された。

小学校3年生の時のことだ。母親が兄と私にお使いを頼んだ。渡されたお金は、当時の岩倉具視の五百円紙幣。

近所の八百屋への道すがら、例によってぼくらは兄弟げんかをした。あげく、私は母から手渡された五百円紙幣を遠くへほうり投げた。そのままお使い業務放棄。ひとり近くの公園でぶらぶらしていた。

はずみで、おおきめの石に足をとられた。少し触っただけなのに、くるぶしあたりからみるみる血があふれた。痛みはなかった。なのに、5針も縫うけがになった。傷口をながめながら、子供心に思った。岩倉具視さんが怒った、ばちあたった。

その後、銀行員になった私は、昭和57年10月、出納係として、新五百円硬貨をお出迎えした。まさに、その日、岩倉具視五百円札最後の日、五百円ぽっきりの違算金をだした。どうしても、精査が五百円あわないのだ。銀行業務における出納違算金は重大なミスである。上司の怒る声を聞きながら、20年前のあの日を思い出していた。なんや、岩倉さん、まだ私を許してへんのか、それとも、硬貨にとってかわられるのが嫌なんか。

その後、いくたびかの新札発行や記念硬貨の発行を経験して、私は3月に定年退職を迎えた。今回の新しい紙幣、新しい硬貨を還暦の新たな気持ちでお迎えしたいと思っている。そして、お役御免となる肖像画の方々、気持ちよく後任に役目をお譲りいただきたいと思う次第である。

若山 正文 60 嘱託銀行員 千葉県習志野市