【悼】映画監督・佐藤純弥さん 現場をまとめた人間力 - 産経ニュース

メインコンテンツ

映画監督・佐藤純弥さん 現場をまとめた人間力

映画監督・佐藤純弥さん(瀧誠四郎撮影)
映画監督・佐藤純弥さん(瀧誠四郎撮影)

 映画監督には作品の演出とは別に、撮影や照明など多くのスタッフを統率する「現場監督の顔」も求められる。中国で大ヒットした「君よ憤怒(ふんど)の河を渉れ」、角川映画の「人間の証明」「野性の証明」、大規模な中国ロケの「未完の対局」…。半世紀ものキャリアの中で数々の娯楽大作を成功させた佐藤純弥監督は、現場をまとめて円滑に撮影を進めることにかけて天才的な手腕を見せた人だった。

 東大文学部を卒業後、昭和31年に東映に入社。オーストラリアロケの「荒野の渡世人」(43年)やイランロケの「ゴルゴ13」(48年)=いずれも高倉健さん主演=など意思疎通に苦労する海外での撮影を次々と成功させた。

 「誠実で言い訳をせず、こびない。『荒野の渡世人』では現地のスタントマンが純弥さんにほめられて大喜びしていた。演出手腕もそうだけど、人間性にほれたんだ」。数々の作品でタッグを組み、18日に79歳で亡くなった元東映プロデューサーの坂上順(さかがみ・すなお)さんは、4月の取材でこう振り返っていた。

 国内撮影でも「人間力」は発揮された。50年の「新幹線大爆破」が好例だろう。新幹線に爆弾が仕掛けられるパニック映画。やくざ映画中心だった東映は、このジャンルの脚本作りに不慣れだった。そこで、坂上さんは「必ず形にしてくれるはず」と佐藤監督を指名する。佐藤監督は高倉さん演じる犯人と政府、国鉄、警察の思惑が錯綜(さくそう)する脚本を執筆。製作費の不足や、題名を嫌った国鉄が協力を拒む逆境の中、緊張感に満ちた傑作に仕上げ、海外でも高く評価された。

 その後も、プロデューサーの角川春樹さん、主演の高倉さん、米国スタッフらの意見の食い違いを調整しながら「野性の証明」を撮り、監督が2人も降板した「敦煌」を成功に導く。苦労が伴う企画をなぜ引き受けるのか。坂上さんによると、「テレビゲームが大好きだった」という。与えられたルールの下で最善の道を探すことが性に合っていたのかもしれない。

 遺作は平成22年の「桜田門外ノ変」。20年、旭日小綬章の際には取材にこう答えていた。「趣味ねぇ…映画かな」(岡本耕治)

 2月9日、86歳で死去。