その他の写真を見る (1/3枚)
国の天然記念物に指定されている「奈良のシカ」がお菓子の袋などを食べ、体調を崩して死ぬケースが相次いでいる。シカの保護活動に取り組む「奈良の鹿愛護会」が死んだシカを解剖したところ、ポリ袋とみられる4・3キロもの異物が胃から出てきたケースも。お菓子の袋には食べ物のにおいが付いており、シカが落ちている袋を食べ物と勘違いしたり、観光客がお菓子を与える際に誤って食べてしまうケースが目立つという。背景には外国人を含む観光客の増加でマナーが徹底できない事情がある。(桑島浩任)
6頭から大量の異物
「東大寺の近くに様子のおかしいシカがいる」
3月23日、「奈良の鹿愛護会」に通行人からこんな連絡があった。職員が現場に向かい、東大寺南大門付近でやせ細ったシカ1頭を保護。ひどく衰弱していた上、餌にもほとんど口をつけず、翌日死んだ。
シカは17歳ぐらいのメスで、適正体重を約10キロも下回る30キロしかなかった。同会が解剖したところ、ポリ袋とみられる異物のかたまりが胃をほぼ埋め尽くしていたという。その量は3・2キロ。「これでは食べても栄養をほとんど吸収できない。苦しかったはず」。解剖を担当した同会の丸子理恵獣医師(51)はそう話す。
反芻(はんすう)動物のシカは4つの胃を持っており、異物は第1胃から見つかった。第1胃は食べた草を微生物などの力を借りて発酵させ、栄養を吸収する役割がある。異物が詰まっていると正常に機能せず、次の胃に食べたものを送ることができない。