一聞百見

やじ将軍、実は阪神優勝の立役者 小林繁、中村勝広…野球解説者でOB会長・川藤幸三さん(69)

毎年、読売テレビと野球解説者の契約を交わしているが、年々、地上波の試合中継は減る一方。今季同局の放映はわずか5試合。うち3試合を川藤が担当する。1シーズン3試合の解説のために120試合以上、球場に行き、阪神だけでなく敵チームの練習も見る。

そんなことをしている解説者は一人もいない。みな、自分の担当の試合の日だけ球場に来て、練習も見ず解説する人がほとんどだ。

「人のことは知らん。ワシはそうする、それだけや」

もちろん、放送局から旅費も宿泊費も出ない。

「自腹切っとる。けどな、いつ何を聞かれても答えられるようにするには、練習を見んと分からんやろ。見とったら、少しの違いが見えてくるんや。おぉ、こいつ、こんなタマを打てるようになりよった。選手の成長が見えるんや」

川藤はうれしそうに話す。だが、なぜ、そこまでするのか-。

「そら当たり前の話や。ずっと野球の世界で生きてきた。ワシの仕事は野球なんや。だから、野球を大事にせにゃいかんのよ」

いまもずっとベンチのど真ん中に座り続けるのには訳がある。それは昭和60年に初代ミスター・タイガース、藤村富美男から言われた仕事を果たすため。

シーズン中のある日、川藤は甲子園球場のOB室の横を通った際、藤村に呼び止められた。

『カワちょっと来い。あのな、お前のヒットなんかどうでもええ。ベンチでふんぞり返っとるのが大事なんや。お前はタイガースの歴史を分かっとる。後輩にそれをつないでいくのがお前の仕事や。華やかな舞台は人に任せとけ。お前は自分の仕事を果たせ。分かったのう、カワ!』

「初めはこのオッサン、何を言うとるんや-と思ったけど、あの言葉で『あぁ、ワシもタイガースの人間になれた』と感激したな」