しずおか・このひと

静岡大アジア研究センター長・楊海英教授(54)

 ■国際性豊か静岡は住みやすい

 昨年12月に発表された産経新聞の正論新風賞。新進気鋭の言論人に贈られるもので、文化人類学者で静岡大学アジア研究センター長を務める楊海英教授(54)が正論執筆陣に参画して1年余で受賞した。内モンゴル出身で、日中両国で学び、培った深い知識と見識に裏付けられた鋭い日中関係論に注目が集まっている。静岡に住んで今年で20年目を迎え、伝統文化やインフラなどの整った「国際性豊かな地域」と評し、静岡ライフを満喫している。(松本恵司)

 --新風賞の受賞、おめでとうございます

 「まだ書いて1年しかたっておらず、頂けるとは思っていなかったので、大変びっくりしました。日本から中国を見た場合、ともすれば美化したり、いろいろ教えてもらった恩人の国とかいう認識はあるが、決してそうではないと。やはり、中国という国をきちんと認識しなければならないし、そういう意味でいろいろと発言し、執筆してきました」

 --平成元(1989)年に来日されています

 「平成を丸々経験したわけですね。日本は当時、昭和から穏やかな平成の時代に入るわけですが、中国は元年6月に天安門事件が勃発します。(共産党の胡耀邦前総書記の死去を契機に)民主化を求めた学生や市民が武力で弾圧されるわけですよ。平和に暮らす日本人にとっては非常にショックだったと思います。その後、中国は民主化よりも経済優先という時代に入り、経済面では確かに大国になりましたが、経済的に豊かになれば民主化が実現するかといえば、そうはならなかった」

 「日本は中国に関与して自国のノウハウを教えていけば民主化するんじゃないかと、(4年10月に)上皇さまに訪中いただいたり、(西側諸国の中でいち早く)経済制裁を解除したりしましたが、中国はそれを恩に感じず、まもなく反日政策を取るわけです。平成も30年が過ぎて新たな時代を迎え、中国は経済大国になったけれども、民主化どころか、ますます独裁的になっていますよね」

 --経済的に世界を牛耳る中国は世界の脅威になるでしょうか

 「大きな脅威になると思います。おそらく中国は崩壊しないし、このまま膨張し続けるでしょう。人口が多いし、国家の富を全部、一党独裁の共産党が握っているから、その国家としてのパワーはやはり米国をしのぐわけです。民主主義は国民の総意を取らないといけないが、独裁政権はその必要がないし、国家予算も好き放題に使える。国家としてのパワーが米国を超えたときが怖いですね」

 --静岡に来られたのは

 「平成11年です。ちょうど20年になるんですよ。ずっと静岡市内に住んでいます。住みやすくて、日本文化の中心地、伝統の強い所。世界文化遺産の富士山もあるし。世界に行けば、日本(を代表するの)は富士山だし、どこに住んでいるのと聞かれ、富士山の麓にいると言うと分かりやすい。気候も温暖ですし、いい所に来たなと思う。清水港は国際港で、静岡空港は国際空港、新幹線に乗ればどこへでも行ける。静岡にローカル性は感じないし、国際性豊かだと感じますよ」

 --12年に日本に帰化しました

 「躊躇(ちゅうちょ)は特になかったです。モンゴル人なので、中国にアイデンティティーは抱いていなかったですし、すんなりと決めました」

 --今後の活動目標を教えてください

 「静岡大学でアジア研究センターのセンター長を引き受けていますので、これからアジアがどうなっていくのか、日本とアジアとの関係、本県とアジアの関係、さらにアジアの実態を日本に伝え、日本のことをアジアに伝えていけたらと思っています」

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【プロフィル】楊海英

 よう・かいえい 昭和39年9月15日生まれ。日本名・大野旭(おおの・あきら)。中国・内モンゴル自治区出身。北京第二外国語学院大学日本語学科卒。総合研究大学院大学などを経て、平成11年に静岡大学助教授、18年から現職。今年2月に出版した「独裁の中国現代史」(文春新書)など著書多数。「表面的な言葉よりも信念のある行動のほうが大事」と話す。