主張

豪総選挙 対中国で厳格な姿勢貫け

 オーストラリア総選挙は与党・保守連合が、優位が伝えられた野党・労働党を下して勝利し、モリソン首相の続投が決まった。

 保守連合政権は、中国を念頭に、外国人の政治献金を禁止するなど、不当な政治干渉を阻止するための法整備を進めた。豪政府の厳格な対中姿勢は当面、維持されよう。

 与党の逆転勝利の要因の一つとして、政治献金や投資、移民などを通じた中国の浸透への懸念があることは否定できない。

 南シナ海をめぐり、中国の主張を正当化する発言をした労働党政治家が中国人実業家から献金を得ていた問題は波紋を広げ、干渉阻止の法整備の契機となった。

 保守連合政権は、第5世代(5G)の移動通信整備から中国の華為技術(ファーウェイ)を排除したほか、巨大経済圏構想「一帯一路」への参加も見送っている。

 これに対し、労働党は政権にあった2007~13年、親中路線を進めた上、現在のショーテン党首が「中国は戦略的脅威ではなく戦略的好機だ」と語るなど中国寄りの発言が目立っていた。

 ただし、保守連合にとっても、最大の貿易相手国である中国との関係は無視できない。対中外交は今後の大きな課題であり、注視しなければならない。

 中国をめぐり、豪州を含む各国が、経済力目当ての接近から、距離を取る方向へ転じている。

 近隣のインドネシアやマレーシアでは、中国の鉄道建設計画のずさんさが露呈し、過度な中国依存への反省が強まった。途上国の多くで、中国によるインフラ整備で背負わされる「債務の罠(わな)」が問題になっている。

 日本と豪州はそれぞれが米国の同盟国であり、自由、民主主義の価値を共有する。「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、連携を強めるべきだ。

 就任9カ月のモリソン首相だが、選挙を経て安定した政権運営を期待したい。6月の大阪での20カ国・地域(G20)首脳会議の機会など、早期に安倍晋三首相との日豪首脳会談を開いてほしい。

 重要なのは、中国が軍事拠点化を進める南シナ海などで日豪が、米国やインドと協力し、航行の自由を守り抜くことだ。それには、同じ海洋国家のインドネシアなど東南アジア諸国と足並みをそろえる努力も欠かせない。

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