主張

GDP2.1%増 投資と消費に懸念拭えぬ

 2四半期連続のプラス成長といっても、安堵(あんど)することはできない。1~3月期の国内総生産(GDP)の速報値は、むしろ、景気の変調を再確認させる結果となった。

 実質GDPは年率換算で2・1%増だった。民間機関の多くがマイナス成長を予測していたのを踏まえれば予想外の高さだ。景況感が一気に悪化するような事態でないのは確かである。

 そうだとしても、内実を伴っていないのが気がかりだ。米中摩擦の激化に伴う輸出の減少はもちろんある。同時に、設備投資や個人消費も振るわなかった。

 茂木敏充経済再生担当相は「内需の増加傾向は崩れていない」と述べたが、景気を支えてきた国内需要に陰りがあるなら警戒は怠れない。足元の経済実態を冷静に見極めることが肝要である。

 1~3月期は、補正予算の効果もあって公共投資や住宅投資が成長を牽引(けんいん)した。

 それ以上に寄与が大きかったのは外需である。ただし海外経済が良かったためではなく、その逆である。輸出以上に輸入が落ち込んだため、計算上、GDPを押し上げたにすぎない。

 輸入が大きく減ったのは国内景気の弱さを映したものだろう。そうであるなら、海外経済の低迷が国内経済に波及したのだと認識しておかなければならない。

 昨年10~12月期には好調だった設備投資が、1~3月期に減少へと転じたのもその表れだ。かねて減速傾向だった中国経済は、対米摩擦の激化につれて、その度合いを強めている。身構えた日本企業が投資意欲を低下させた。

 先に内閣府が発表した景気動向指数の景気判断は6年2カ月ぶりの「悪化」だった。1~3月期のGDPも含めて、戦後最長の回復局面としてきた政府の景気認識がなお適切かどうかを綿密に検討すべきは当然だ。10月に予定される消費税増税に万全の対応をするためにも重要な作業である。

 注意したいのは、むやみに悲観論や楽観論へと傾斜することである。米中摩擦がどれほど世界経済を悪化させるのかは予断を許さない。これ次第で日本の景気は大きく変わるはずである。

 日本経済には底堅さもある。企業の収益水準はなお高く、雇用環境もいい。消費が底割れするような状況ともいえない。この点は明確に認識しておくべきである。

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