テッポウエビが発する「プラズマ衝撃波」を再現するロボットハサミ、米研究者らが開発

ロボット化することのメリット

だが、いま以上に効率化することは可能かもしれない。ロボットハサミであれば、研究者はテッポウエビの生態を忠実に再現する必要はないからだ。

実際、スタークはハサミの上半分を小さくすることに成功した。本物のテッポウエビでこの部分が膨らんでいるのは、付属肢を動かすための筋肉を収納しているからだ。しかし、ロボット版はこのような生物学的な制約を受けない。

スタンフォード大学の生物学者レイチェル・クレインは、テッポウエビと同じくキャビテーション気泡を発生させる強烈なパンチを繰り出す甲殻類、シャコを研究している。そのパンチを再現したデバイス「Ninjabot」の開発にも携わった経験がある。

クレインは「動物の行動を再現するのは最初のステップです」と語る。「そのあとは、よく観察して、この大きな筋肉は必要ないからカットしよう、といった具合に改良していきます。そうすることで、よりよいシステムを生み出せるでしょう」

ハサミで岩盤を掘削することも可能に?

システムを改良する方法についても、自然から学ぶことは多そうだ。世界の海には数百種のテッポウエビが生息し、それぞれ独自の適応を遂げたハサミを、今日もパチンと鳴らしている。そのうえ、ハサミの形態には、同じ種のなかでも個体差がある。

デューク大学でシャコの打撃能力を研究する生物学者シーラ・パテクは、「進化の前提条件、そしてさまざまな種類のテッポウエビが存在する唯一の理由は、個体差があることです」と言う。つまり、研究チームは独自にロボットハサミに工夫を凝らしてもいいし、テッポウエビが本来もつ多様性からインスピレーションを得て、最初に3Dプリントでつくりだしたハサミ以外の形態を試してみてもいいのだ。

そうして改良されたテッポウエビに着想を得たデバイスは、将来さまざまな分野への応用が考えられる。野生のテッポウエビがサンゴ礁に巣穴を掘るように、ハサミが生み出すプラズマを使って岩盤を掘削するのもそのひとつだ。

あるいは、このシステムを使って水分子を分解して過酸化水素をつくることで、水を浄化することも可能かもしれない。「過酸化水素は水中の有機汚染物質を破壊します。水道水の殺菌や排水の浄化を考えるにあたっては、効率は非常に重要です」

そんなわけで、テッポウエビのハサミには、また新たな用途が加わりそうだ。

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