主張

ファーウェイ排除 覇権阻止へ日本も行動を

 トランプ米大統領が、中国通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」と関連企業を米国市場から完全に締め出すことに向かう大統領令に正式に署名した。

 同社の製品には中国によるスパイ行為やサイバー攻撃に悪用される「国家安全保障上のリスク」があるとする危機感に基づく対応だ。

 大統領令は米国企業による同社製品の調達を事実上禁じている。米商務省は、米企業に華為と関連企業への部品供給を禁じる措置を発表した。

 膠着(こうちゃく)した米中貿易協議で中国を揺さぶる切り札にしたい思惑もちらつくが、今回の思い切った措置の本質は「新冷戦」ともいうべき中国との深刻な対立である。

 トランプ政権は軍事、経済両面の優位を保つため、それを支える技術分野での中国の不当な伸長を押さえ込む決意だ。

 華為など中国企業の第5世代(5G)移動通信技術は、習近平政権による世界の通信網支配を実現させかねない。

 米国は同盟国に華為排除へ共同行動を求めている。日本はすでに政府調達の対象から華為など中国製品を排除した。今回の米国による措置は華為の経営に大きな打撃を与え、同社に部品を供給する日本企業への影響も免れない。

 英独両国のように「リスクは自国で判断する」とし、同社の完全排除には応じていない国もある。だが、日本政府は同盟国として、米国と安全保障上の危機感を共有し、足並みをそろえるべきだ。

 ひとたび華為に通信網の支配を許せば、次世代の情報基盤となるビッグデータを握られるばかりか、中国情報機関による不正アクセスの侵入口(バックドア)に悪用され、機密情報が盗まれる危険がある。

 華為は民間企業といっても、日米など普通の民主主義国の企業とは異なる。

 共産党独裁下の中国の国家情報法は、民間企業を含め、いかなる組織も国家の情報活動に協力するよう義務づけている。企業の経営陣や親族の生殺与奪の権も共産党政権が握っている。

 共産党政権による企業支配が解かれない限り、安保上の深刻な懸念は消えない。安倍晋三首相は6月の20カ国・地域(G20)首脳会議の議長国として、米国とともにこの点を主張すべきだ。

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