正恩政権打倒目指す組織「自由朝鮮」の光と影

 「臨時政府樹立」というホン・チャン容疑者の目標を結実させた形の「自由朝鮮」は、金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キム・ジョンナム)氏の擁立失敗を受けてか、ホームページ(HP)で「私たちは金氏一族の世襲を断ち切ろうと結集した脱北者や同胞の組織だ」と強調。北朝鮮の政治犯収容所の解体や改革開放も要求している。一方で、韓国在住の脱北者との連携はないと主張した。北朝鮮工作に詳しい韓国の民間研究団体「自由民主研究院」の柳東烈(ユ・ドンヨル)院長は「韓国の団体と連携すれば、秘密保持が難しくなる」との見方を示す。

 欧米メディアはホン・チャン容疑者と米中央情報局(CIA)の接点についても報じてきた。朴氏は、ホン・チャン容疑者が正男氏と直接会ったという話からLiNKを退いた後、CIA要員として働いてきたとの心証を強くしたという。

 柳氏は、正男氏の息子の金ハンソル氏らの国外移送を担ったという点からも「各国間の調整を民間団体だけで行えるはずはなく、米国や中国などの情報機関の介入があったとみるのが妥当だ」と分析。ホン・チャン容疑者がCIAと連携する要員の可能性が高いとみる。大使館を襲撃し、コンピューターなどを奪ったことは「秘密を握った」と北朝鮮を圧迫するのにある程度成功したといえるが、身分が露呈したことで「秘密組織としては終わった」として、今後の活動に大きな制約があるとも指摘した。

 ホン・チャン容疑者は昨年6月、朴氏に「何か果敢な行動をしなければ」と話していた。「自由朝鮮」は4月1日にHPで「大きなことを準備している。そのときまで嵐の前の静けさを守る」と表明してから、仲間への指示とみられる数字の羅列を掲載する以外、目立った動きは見られない。

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