70代の認知症10年で1割減へ 政府が大綱素案で提示

 政府は16日の有識者会議で、認知症対策の強化に向け、発症を抑制する数値目標を初めて盛り込んだ新たな大綱の素案を示した。「70代での発症を10年間で1歳遅らせる」と明記。実現すれば70代患者の約1割減につながるとして、予防策の一層の推進を掲げた。大綱は6月にも関係閣僚会議で決定する。

 厚生労働省の推計によると、認知症の高齢者は平成27年時点で約520万人。団塊世代全員が75歳以上の後期高齢者となる令和7(2025)年には約700万人に達するとされ、政府は現行の認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)に代わる大綱の計画期間を同年までとした。

 素案では、認知症の「予防」と、患者が暮らしやすい社会を目指す「共生」を柱に据えた。

 認知症の発症率は、70代ごろから高くなる傾向があり、この日の会議では、平成30年の調査で、高齢者のうち7人に1人が認知症という最新の推計を公表。人口に占める割合は70~74歳で3・6%、75~79歳で10・4%に上った。

 「予防」で発症を抑制する数値目標の対象も70代に設定し、当面は計画期間にあたる今後6年間で、70代人口に占める認知症の人の割合を6%低下させることを目指すという。

 具体的には、運動や社会参加が孤立を防ぎ、予防につながる可能性を指摘。地域の公園や公民館でのスポーツ教室や教育講座などの活用推進を掲げた。ただ、認知症の予防に関する科学的な根拠が不十分なため、研究も同時に進める。

 また、発症後も自分らしく暮らせる社会の実現にも取り組む。患者への理解の推進や相談窓口の強化を図り、優れた取り組みを行う企業などへの表彰制度の創設を検討。バリアフリー商品やサービスの開発も促すとしている。

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