紛争の傷跡残る北アイルランドで新たな過激派の動き

 キンセラさんによると、新IRAは2012年頃の設立以来、ロンドンデリーなどを拠点に人員を募集し、すでに約200人が集まっている。新IRAは「Saoirse(アイルランド語で自由)」という別名の政治組織を名乗ることもあるという。

 地元で紛争問題を取材し、若い世代を中心に支持を集めてきたマッキーさんの死亡事件をめぐり、カトリック、プロテスタント両派だけでなく、海外メディアからも批判を浴びたことから、新IRAは事件後、テロ組織としては異例の謝罪コメントを発表した。活動が沈静化する見方もあるが、キンセラさんは「新IRAは数カ月後には名前を変えて活動を続ける」と予想する。

 新IRAが活動を活発化する背景には、EU離脱がある。英クイーンズ大ベルファスト校のコリン・ハービー教授は「離脱問題は、深くアイルランドを不安定にさせ続けてきた」と指摘する。新IRAは元々、和平合意に賛同しなかったIRA民兵らによって設立されたとされるが、今は人員の多くが貧困に苦しむロンドンデリーの若者だ。現地住民の一人は「離脱で国境問題が再燃した混乱に乗じ、IRAの名を利用して社会に不満をぶつけている」との見方を示す。

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