近年、最年少棋士の藤井聡太七段(16)の活躍などで将棋界への注目度は上昇。競技人口も増えており、それに伴って駒の出荷額も増えている。
木製の本格的な将棋駒の出荷額のうち95%を占めるのが山形県天童市。だが、同県将棋駒協同組合によると、昭和後期には約60人いた組合員も現在は32人と半減し、高齢化も進む。「歯止めをかけたい」と組合は若い担い手の育成事業に力を入れ、5年計画で基本工程を指導。少しずつ若手の駒師が増えているという。
将棋の駒には漆の使い方などによって複数の種類があり、文字を漆で盛り上げた「盛(もり)上(あげ)駒(ごま)」が最高級仕様。価格は木地の素材などによっても異なり、高級品は1点50万円を下らない。児玉さんの駒は国産の最高級のツゲを使い、250万円の値がついたこともあるが、複数組を所有する熱烈な愛好家も少なくない。
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パリでの個展開催には、将棋人気が海外にも広がっている状況などが背景にある。平成29年にはポーランド出身のカロリーナ・ステチェンスカさんが外国人初の女流プロ棋士に。昨年10月には米国で初めて棋戦が開催され、米国やカナダなどから80人以上の外国人が参加した。
また、山形県を訪れる外国人観光客の間でも駒を工芸品の土産物として買い求めるケースが増えており、関係者は「海外からの熱い視線を感じる」という。
パリでの個展について児玉さんは「将棋を知らない人や駒を初めて見るという人は海外にまだまだ多い。知っている人にとっても、単なる勝負の道具という駒のイメージを覆す個展にしたい」と話している。
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個展「児玉龍兒と盤上の戦士たち」は17~22日、仏ポンピドゥー・センター近くのギャラリー「メタノイア」で開催。展示予定の18組の駒のうち7組はタイトル戦で使用された。