日本の未来を考える

G20、グローバル化議論を 学習院大教授・伊藤元重

大阪G20サミット開催を控え、大阪城を視察する安倍晋三首相=4月20日午後、大阪市中央区(彦野公太朗撮影)
大阪G20サミット開催を控え、大阪城を視察する安倍晋三首相=4月20日午後、大阪市中央区(彦野公太朗撮影)

1990年代の末に、世界貿易機関(WTO)閣僚会議が行われた米国のシアトルは、反グローバル活動の人たちに席巻された。一部は暴徒化し、グローバル化の象徴に見られたスターバックスやナイキなどの店を破壊したようだ。この時の反グローバル活動を観察していた、ある経済学者が次のような指摘をしている。「この活動にはいろいろな人が参加していた。途上国の労働力の搾取を批判する人権団体、環境問題に関わる団体、先進国の労働組合、さらには活躍の場が縮小していたかつての共産主義者など、実にさまざまな人たちがグローバル化への反対で結集していた」のだ。

グローバル化の動きはそれほど強力なものであり、それに反対することが多くの人々を結集させる力となった。グローバリズムに反対することが錦の御旗となったのだ。それほどグローバル化はインパクトの大きなものだった。ただ反グローバル化の中をみると、それぞれがまったく違った意図を持っていた。つまり呉越同舟であったのだ。

いま、世界全体にグローバル化への抵抗の運動が広がっている。英国のEUからの離脱、欧州諸国での反移民の政治的な動き、米国が仕掛ける関税引き上げなど、形は違うがいずれもグローバル化の流れに反対する政治的な動きだ。その動きが世界の政治経済に大きな不安定要因となっている。いま必要なことは、グローバル化とは何なのか、何が問題で何がそうではないのかという点について、冷静な議論をすることである。

いうまでもなく、グローバル化と呼ばれる動きの中にはいくつもの異なったものが含まれる。物が国境を越える貿易、お金が世界を駆け巡るグローバルマネーの動き、人が国境を越えて動く移民や難民、犯罪やテロが国境を越えて動くこと、地球環境が劣化していく流れ、そして私たちの個人情報が国境を越えて利用されること。これらはいずれもグローバル化と呼ばれる現象の中に含まれるが、それが社会や経済に及ぼす影響はさまざまである。

物の貿易についてはできるだけ自由にした方がよいというのが、大半の経済学者の信じるところだが、マネーや人が国境を動くことについては、無条件の自由化がよいと思っている経済学者は少ないだろう。自由化と規制の組み合わせが求められる。グローバルマネーの功罪についてはまだ意見が大きく分かれる。人が国境を越えて動くとなると、それへの適切な対応のあり方は経済問題を超えて、社会のあり方の根本に関わってくる。大量のデータが国境をこえることについても、それへの評価については議論が始まったばかりである。

グローバル化のあるべき姿については単純に是か非かという議論はできない。ヒト・物・金・情報など、グローバル化のそれぞれの側面について緻密な分析が行われる必要がある。まずは、世界の主要国の間で、これらの点についての踏み込んだ議論が必要だ。6月に大阪で開かれるG20の会議はその格好の場である。(いとう もとしげ)