中心市街地にLRT導入へ 和歌山市そろり始動

 一方で、当時は急速にマイカーが普及し、全国的に路面電車の廃止が相次いでいた。市内でも渋滞を招いていると不要論が高まり、46年の黒潮国体に向けた道路拡幅などに伴い、同年、廃止された。この廃止が後の市中心市街地の衰退を招いたとする見方も根強い。

 鉄道ファンの関東在住の男子高校生が動画投稿サイト「ユーチューブ」に掲載した動画「しくじり都市和歌山市編」では、JRと南海の2駅から1キロ以上離れた中心市街地「ぶらくり丁」をつなぐ市電の廃止後に、大手百貨店の撤退や郊外型店舗の出店が相次いだ歴史を紹介する。

 和歌山を訪れ、ぶらくり丁の衰退に驚いたという男子高校生は「思っていた以上に深刻。失敗の教訓を多くの人が知り、地方の活性化を考える機会になれば」と制作の動機を語る。

 和歌山城内にある「わかやま歴史館」の吉田豊学芸員も「市電廃止は自動車中心社会や郊外型のまちづくりに大きく影響を与えた」と歴史的背景を指摘する。

 一方、市交通政策課の担当者は動画などについて、「廃止のみが街の衰退に直結したという捉え方は少し違う」としながらも、「和歌山が活性化してほしい、という市への叱咤(しった)激励と受け止めたい」と動画の指摘に理解を示す。

 ■山積する課題

 ただ導入には課題も多い。市によると、PTの試算では、研究ルートとされた9つのルートで、自動車利用者の1%がLRTに乗り換えた場合でも8ルートで600万~9600万円の赤字が見込まれる。キロ単価で25億円とされる莫大(ばくだい)な初期費用の負担や現在運行するバス事業者とのすみ分けに向けた調整も必要となる。

 また、市が29年に約千人を対象に実施した市政世論調査では、LRT導入に賛成が反対を約2割上回ったが、JR和歌山駅と南海和歌山市駅を結ぶ3ルートについて利用するか尋ねたところ約4割の市民が「利用しない」と回答した。

 こうした現実に、尾花市長も「LRTは、まだまだ理解が得られていない」と認め、市交通政策課の担当者も「中心市街地にもっとにぎわいがあれば(導入)可能性はゼロではないのですが…」と厳しい現実を受け止める。