【ニューヨーク=上塚真由】米ニューヨークの国連本部で10日に開かれた拉致問題のシンポジウムで、拉致被害者、横田めぐみさん(54)=拉致当時(13)=の弟、拓也さん(50)は「これ以上、北朝鮮当局の暴挙と時間稼ぎを許してはならない」と訴え、拉致被害者全員の「即時一括帰国」に向け国際社会に協力を呼びかけた。
拓也さんは、北朝鮮による拉致問題や自国民への人権侵害は「現在進行形の看過できない問題だ」と強調。2度の米朝首脳会談について「北朝鮮に非核化の意図は全くない」との認識を示し、「米国を欺くようなやり方は二度と通用しない」と指摘。拉致被害者の即時一括帰国に向け、「日本政府は北朝鮮への要求水準を下げることなく、毅然(きぜん)とした外交交渉をしてほしい」と語った。
また、田口八重子さん(63)=同(22)=の長男、飯塚耕一郎さん(42)は拉致被害者の家族の高齢化が進んでいる現状を説明し「これ以上、時間をかけてはならない」と訴えた。終了後、飯塚さんは「核ミサイル問題も重要だが、人権問題も外せないという認識を強く感じた」と手応えを語った。
シンポジウムには、北朝鮮で拘束され帰国直後に死亡した米大学生オットー・ワームビアさん=同(22)=の父、フレッドさんも参加。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長について「委員長ではなく、犯罪者と呼ぶべきだ」と述べ、強い言葉で批判した。