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袋小路に入った英国の欧州連合(EU)離脱交渉では、唯一の地続き国境である英領北アイルランドとEU加盟国アイルランドの国境管理が最大の難題だ。北アイルランドの中心都市ベルファストでは、英国との激しい武力闘争に身を投じたキリスト教カトリック系武装組織の元民兵がテロ再燃を警告。英国統治の維持を求めてきたプロテスタント系も離脱が和平合意に悪影響を及ぼすことに懸念を示した。(ベルファスト 岡部伸)
北アイルランドでは1960年代から英国からの分離独立とアイルランドへの帰属を主張する少数のカトリック系住民と英国残留を求める多数のプロテスタント系住民の武装組織が激しく対立し、30年間で約3500人が犠牲になった。98年のベルファスト合意でようやく終結。武装解除や国境の開放で人や物が自由に往来できるようになり、観光業も急成長した。
しかし、英国がEUとの合意のないまま離脱に進めば、約500キロの南北間で税関検査などの国境管理が必要となり、経済活動にも多大な影響が出る。
「国境は、英国がアイルランドに侵略して勝手に作った。その国境が復活すれば、英国、アイルランドを問わず、攻撃される可能性を排除しない」
カトリック系でアイルランド共和軍(IRA)民兵だったマイケル・カルバートさん(69)は語った。カトリック、プロテスタント両派の闘争が激化した70年代にIRAに身を投じ、英軍兵士数人を殺害して殺人の罪で終身刑判決を受けて16年間投獄された。98年の和平合意以降、「憎しみや敵対する気持ちを捨てて」、服役を終えた元民兵の社会復帰を後押しするNPOで両派の相互理解を進める活動を続けている。