【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮国営メディアは5日、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が4日に日本海で行われた火力打撃訓練を指導したと報じ、垂直に打ち上がるミサイルの写真を公開した。韓国国防省は「新型戦術誘導兵器」と分析。専門家の間では、ロシアが開発した短距離弾道ミサイル「イスカンデル」に似たミサイルとの見方も出ている。弾道ミサイルなら国連安全保障理事会の決議に違反する。
韓国軍は北朝鮮が4日朝に東部の虎島(ホド)半島付近から飛翔(ひしょう)体数発を日本海方向に発射し、約70~240キロ飛行したと分析。国連決議違反だと即座に批判されない程度に射程を抑え、国際社会の反応を試した可能性がある。対米非核化交渉が滞る中、軍事力を誇示してトランプ米政権を揺さぶると同時に、国内の引き締めを図る狙いもありそうだ。
朝鮮中央通信によると、訓練は東部の前線部隊で「予告なく不意に」組まれたもので、大口径長距離放射砲(多連装ロケット砲)や戦術誘導兵器の運用能力を点検。金氏が発射命令を下したという。金氏は即戦態勢を高く評価し、「強い力によってのみ真の平和と安全が保障される」と強調。同通信は「いかなる勢力でもわれわれの自主権や尊厳を害そうとするなら、容赦なく即時反撃するという朝鮮人民軍の断固たる意志を誇示した」と伝えた。
今回発射されたのは、金氏が4月17日に実験を視察したと報じられた「新型戦術誘導兵器」と同一の兵器だとみられている。