5月5日は「こどもの日」だが、「わかめの日」でもあることをご存じだろうか。ちょうど今頃が旬で、カルシウムやヨウ素など、子供の成長に欠かせない栄養も豊富。子供はすくすく元気に、大人もおいしく健康に、日々の食事にもっとワカメを取り入れてはいかが。(加藤聖子)
万葉集にも詠まれ
日本のワカメの歴史は古い。青森県つがる市亀ケ岡の泥炭層遺跡からは、ワカメを含めた海藻が発見されており、縄文時代には既に利用されていたことが確認されている。
奈良時代の歌集「万葉集」にもワカメを詠んだ歌があり、古くから日本の食や文化に深く関わっていたことが分かる。
現代でもワカメは日本の食に欠かせず、みそ汁、ラーメン、サラダと、見かけない日はないほどだ。
ワカメは天然のものと養殖のものがあるが、市販品のほとんどは養殖。8~9月頃に胞子を種糸につけ、11月頃に発芽、翌年2~4月頃に収穫される。
収穫時は長さ2~3メートルと大きく、色も茶色いが、湯通しすることで鮮やかな緑色になる。市販品は「湯通し塩蔵ワカメ」、またはそれを塩抜きし、カットして乾燥させた「カットワカメ」が主流だ。
日本わかめ協会の会長、岩崎誠さんは「ちょうど今は、収穫されたばかりの新物が出回っており、旬のおいしいワカメを味わえる時期」と話す。
三陸地方の復興に
ワカメの市場規模は比較的安定しており、過去20年は年間450億~490億円程度で推移しているが、一時大きく落ち込んだのが東日本大震災があった平成23年。三陸地方が津波で大打撃を受け、収穫量日本一を誇っていた岩手県などの水揚げが落ち込んだためだ。今では震災前に近い水準まで戻ったが、回復には漁業関係者の努力や、飲食店、消費者の協力が欠かせなかった。
埼玉県志木市にある居酒屋「三陸の台所 越喜来(おきらい)や」は、三陸のおいしい海産物を提供する人気店。初代オーナーが震災後、岩手県大船渡市三陸町の越喜来地区を訪れ、復興への懸け橋になりたいと、24年にオープンさせた。
同店で期間限定で提供される人気メニューが「初摘み 生わかめ しゃぶしゃぶ」。これを目当てに訪れる客も多いという。
新鮮な茶色い生ワカメをお湯に入れると、一瞬で鮮やかな緑色に。ワカメから出ただしの香りが漂う中、ポン酢につけていただくと、シャキシャキとした食感に箸が止まらなくなった。店主の堀池修平さんは「三陸の初摘みワカメは、やわらかいのにシャキシャキとしており、お客さまからもおいしいと評判。ぜひ、三陸の海産物を食べて復興を応援してほしい」と話す。
さくっと唐揚げで
ワカメは「海の野菜」とも呼ばれ、栄養も満点。髪や皮膚の健康を保つヨウ素のほか、カルシウム、食物繊維などが豊富だ。近年は食後の血糖値上昇を抑制する効果や、メカブ(ワカメの根元)のネバネバに多く含まれる「フコイダン」がインフルエンザの感染予防に効果があるという研究結果も発表されている。
意識して、もう少し食べる量を増やしてもいいかもしれない。これからの季節、「ワカメの唐揚げ」はビールのお供、子供のおやつにもぴったりだ。
水で戻したワカメ100グラムに対し、塩小さじ4分の1、しょうゆ少量で下味をつけ、市販の唐揚げ粉、または、片栗粉、塩、ガーリックパウダーを混ぜた衣をつけて、175度の油で90秒揚げるだけ。岩崎会長は「みそ汁やサラダなどが定番だが、それ以外の食べ方も積極的に提案していきたい」と話している。