朝晴れエッセー

ボヘミアン・ラプソディ・5月4日

映画「ボヘミアン・ラプソディ」が大ヒットした。あの音楽に世界が驚嘆したのはもう40数年も前、今も色あせない荘厳なサウンドは本当にすごいと思う。

ヒット当時中学生だった私の、その後の人生を決めたのはクイーンだ。山間に生まれ育ち、父が曳(ひ)く馬で生計を立てていた小さいわが家。日曜日に何気なくつけた小型ラジオから偶然クイーンが流れ、その妖艶(ようえん)な旋律に電気が走るほどの感動を受けた。

でも雑音がときどきメロディーをかき消してしまう。なんとか来週の放送までに音を良くしようと知恵を絞った。屋根に上って電波を探りながら聴く…。アンテナを針金で巻いて伸ばす…。スピーカーを引っ張り出して木箱に入れて響かせる…。週を追うごとに効果は表れていった。

そして初めての趣味をしっかり学ぼうと親の反対を押して上京。放送の専門学校を新聞奨学生として卒業し、小さな音響映像会社に就職した。到来したバブルでは業界の繁栄に浮かれたものの、その反動は大きかった。そのときつくづくと、趣味は仕事にするものじゃないな…と思ったものだ。

返済延長した住宅ローンは間もなく終わり子供たちも巣立った今、あの頃の私と同じ志の学生に知識を還元している。目を輝かせ熱心に学ぶ姿は実に美しい映像だ。やはり趣味を仕事にしてきてよかったのだ。

私の「ボヘミアン・ラプソディ」は、なだらかなエンディングに入ったのだろう。でもこの曲はまだ長い。

中山 計介 58 専門学校非常勤講師 茨城県常総市