御代替わりの余韻がまださめやらぬ3日、日本国憲法は施行72年を迎えた。
天皇陛下は即位後朝見の儀のお言葉で「国民の幸せと国の一層の発展、そして世界の平和を切に希望します」と述べられた。上皇陛下は退位礼正殿の儀における天皇として最後のお言葉で、令和の時代について、平和で実り多くあるよう願われた。
新しい御代も平和をしっかりと保ちつつ、国と社会の発展、繁栄に努めたい。平和は常に国民の願うところである。
≪自衛隊と安保が守った≫
そのためには一体どうすればよいのか。憲法改正は急務の一つとなっている。
現憲法が制定されてから、日本は幸いにも戦争をすることはなかった。ただし、憲法第9条が平和を守ってきたと考える人がいるとすれば、大きな間違いだ。
突き詰めて言えば、自衛隊と日米安全保障条約に基づく米軍の抑止力が日本の平和を守ってきたのである。
抑止力を高めることが現代の安全保障の根幹といえる。これを理解しない陣営は9条を旗印にして、国民を守るための現実的な安全保障政策をことごとく妨げようとしてきた。これはなにも冷戦期だけの話ではない。現在進行形の深刻な問題だ。
周辺の安全保障環境は厳しく、日本は平和な世界に住んでいないのが現実だ。世界第2位の経済力を背景に軍拡を進める中国は尖閣諸島をねらっている。国際法を無視して南シナ海の人工島の軍事化を進め、習近平国家主席は台湾への武力行使を否定しない。
北朝鮮は核・ミサイル戦力を放棄しない。米朝交渉の停滞をよそに軍事力の強化に走っている。深刻な脅威は去っていない。
ところが、立憲民主党、国民民主党、共産党、社民党などの一部野党が4月22日、集団的自衛権の限定行使を容認する安保関連法の廃止法案を参院へ提出した。
安保関連法の制定で日米は初めて守り合う関係になった。同盟の抑止力は強化され、北朝鮮危機への対応に間に合った。
冷戦時代の古い憲法解釈にこだわり、脅威に対処する同盟の抑止力を損なう廃止法案を提出した野党は現実を見失っている。
戦後の学校教育は、普通の民主主義国が国防のため軍隊を持っていることや同盟と抑止力の意義、周辺国の脅威を教えてこなかった。「平和憲法」を金科玉条とする勢力の存在が安全保障に関する国民教育の妨げとなってきた。これがある種の「平和ぼけ」にもつながっていないか。
「戦力の不保持」を定めた9条2項を削除して軍の保持を認めることが9条改正のゴールだが、その前段として憲法に自衛隊を明記することは意義がある。
≪参院選で改憲を訴えよ≫
防衛が国の大切な役割で、平和を守るために自衛隊があることを憲法に明記したい。そうすることで、学校現場のいたずらな軍事忌避の風潮を改める契機にもでき、日本の安保論議の底上げにつながる。安倍晋三首相や自民党は夏の参院選で、令和の平和を守るためにも憲法改正の必要性を積極的に訴えるべきだ。
日本が取り組むべき憲法上の課題は改正にとどまらない。憲法の天皇関連条文は元首の明文化など改正が必要だが、それ以前に条文の解釈や運用を、現実の国柄に合わせていく努力が必要である。
今回の御代替わりは政府や国会が主導したものではない。上皇陛下の譲位のご希望を知った国民がかなえてさしあげたいと願い、政府や国会を後押しして実現した。このような天皇と国民の絆こそ、古くからの国柄の現れだ。
退位礼正殿の儀では、譲位特例法に言及した安倍首相の国民代表の辞が、お言葉に先んじた。政府内には、お言葉を先にすると天皇が「国政に関する権能を有しない」とした憲法第4条に触れるとの懸念があったという。
このような憲法解釈は事実を踏まえず狭量にすぎる。御代替わりは上皇陛下のお考えが契機で、譲位特例法はその手続きである。
皇室に関わる重要事についてまで天皇のご意思をまるでなかったようにするのは近代憲法を持つ前から存在してきた国柄と、象徴たる立憲君主の権威を損なう。天皇と国民の絆という国柄を尊重した憲法の運用に努めてほしい。