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米の視線はすでに「6G」 5Gで劣勢、対中巻き返しへ

トランプ米政権は国務省や国防総省を中心に、中国製を使った5Gネットワークから情報漏れの危険があるとして、同盟国や友好国に中国製を採用しないよう求めている。5G網整備で華為の製品などを導入すれば、同盟国であっても機密情報を共有しない厳しい姿勢もみせている。

ただ、英国やドイツが中国製の排除に同調しておらず、米政府による中国包囲網の構築は思うように進んでいない。米国が情報漏れの「証拠を示していない」(英通信会社首脳)との批判や、「中国製を排除しなくてもリスク管理は可能」(英情報関係機関)との認識が背景にある。

こうした国際情勢を踏まえ、米政府が近く、5G網の脆弱(ぜいじゃく)性を詳細に分析した報告書を公表するとの観測も、米ワシントンの情報通信関係筋で浮上している。

そんな中、トランプ大統領の口から、早くも第6世代(6G)の開発を促すような言葉が出ている。

「今の話題は5Gだが、その前は『4Gに乗り遅れるな』といっていた。いずれ『ナンバー6』が話題になる。米国は何にしたってリーダーになりたい」

トランプ氏は4月12日のイベントで、そうも語った。同氏は2月下旬にもツイッターで、「米国で5Gを、いや6Gも、なるべく早く実現したい。米企業は取り組みを強化せねばならない」と述べた。

こうしたトランプ氏の発言に前後して、FCCは3月中旬、将来的に6Gに利用される可能性がある「テラヘルツ波」と呼ばれる周波数帯を、研究向けに開放することを決定し、利用規則を発表した。

これで研究者らは、電波を正式に使うことができるようになる。5Gの開発に取り組んだニューヨーク大学のテッド・ラパポート教授は「6Gの幕開けとなるかもしれない重要で歴史的な一歩だ」と称賛した。

5G網の整備は今後本格化し、米国での投資額は2750億ドル(約30兆円超)になるとの試算もある。米政府は、巨大な国内市場でまず中国製を締め出す方向だが、米政府周辺では、昨年初めから、5Gネットワークの「国有化論」が浮かんでは消え、通信関係者の関心を集めている。

こうした議論は、中国勢に押され気味の米国の危機感が表れているようにも映る。米国が、旗色が悪い5G時代を早々に終わらせ、6Gで主導権を奪回するシナリオを描くとしても不思議ではない。

米国の専門家からも、6G時代を見据えた国家戦略を求める声が出ている。

ハイテクと軍事技術の動向に詳しいバージニア工科大学のチャールズ・クランシー教授は、米首都ワシントンでのシンポジウムで、「米国は6Gで競争の舞台に戻らなければならない。連邦政府の資金支援を背景に大規模な(6Gの)開発計画を国が主導していくことが求められている」と指摘している。(ワシントン 塩原永久)

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