高速通信を可能にする第5世代(5G)移動通信システムの商用サービスが米国や韓国で始まった。本格的な通信網整備はこれからだが、通信機器市場では中国の華為技術(ファーウェイ)が優勢で、米企業の影は薄い。トランプ米政権は安全保障リスクを理由に、中国製を自国や友好国から締め出す構えだ。一方、トランプ米大統領は早くも第6世代(6G)に言及。6Gを見据えた研究も促し、5Gから一足飛びで次世代戦略に踏み出す動きもみせている。
「5Gの競争に米国は勝たなければならない」
トランプ米大統領は4月12日、ホワイトハウスで開いた5Gのイベントで、そう力を込めた。
同席した米連邦通信委員会(FCC)のパイ委員長は、全米で5G網を整備するための204億ドル(約2兆3千億円)規模の基金を設けると発表。米政府として、中国とのハイテク覇権争いで焦点となっている5Gをめぐり、国家ぐるみで主導権の掌握を目指す中国に対抗する姿勢を示した。
米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズは4月3日、5G対応のスマートフォン向けのサービスを一部都市で開始していた。
移動通信の分野では、おおむね10年ごとに技術革新が起きるとされる。現在、主流の第4世代(4G)で先行した米国では、アップルやグーグルといったIT大手が巨大な富を得た。
だが、5Gでは華為や中国の同業、中興通訊(ZTE)が存在感を示し、米国優位の風景は一変する。
米戦略国際問題研究所(CSIS)のジェームス・ルイス氏によると、5Gの基地局などのRANと呼ばれる設備で、華為の世界シェアは31%と首位。これに29%のエリクソン(スウェーデン)や23%のノキア(フィンランド)が続く。コアネットワークと呼ばれる制御系の基幹設備でも華為は上位に位置し、米企業は端末側などの一部機器でアップルやシスコがシェア上位に顔を出す程度だ。
5Gの知的財産(IP)でも中国勢が優位に立つ。独データ分析会社IPリティックスの調査では、技術標準(規格)に関する標準必須特許で、華為はトップの1554件を保有。1427件のノキアが2位に付け、3~4位がサムスン電子など韓国勢。5位にも中国のZTEが入った。
同社の統計によると、華為は規格を策定する国際会議に同業者の中で最大規模の人員を送り込んできた。華為は自社の特許を使わざるを得ない他社から利用料収入が期待できるため、国際会議の場で特許取得を働きかけてきたとみられる。