危惧された通り、ロシアとの北方領土交渉が難航している。安倍晋三首相は昨年11月、プーチン露大統領との間で、日ソ共同宣言(1956年)に基づいて交渉を加速させると合意した。日本側は、同宣言が「平和条約締結後に引き渡す」としている色丹島と歯舞群島の返還に向けて協議が進むと期待したが、やはり独り相撲だった。プーチン政権は「ゼロ回答」を突きつけている。
「もう総理の任期中に北方領土問題は解決できない」。首相官邸で対露政策を主導してきた今井尚哉(たかや)首席秘書官は2月初旬、こう周囲に漏らしたと伝えられている(文藝春秋4月号)。
日本側は6月末、20カ国・地域(G20)首脳会議のために来日するプーチン大統領と、平和条約締結問題で大筋合意することを目指していた。もはや不可能であることが明白だ。