【新聞に喝!】留学生「来る者は拒まず」の問題 京都大学霊長類研究所教授・正高信男  - 産経ニュース

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新聞に喝!

留学生「来る者は拒まず」の問題 京都大学霊長類研究所教授・正高信男 

文部科学省
文部科学省

 昨今、規模の大きな大学で、インターンシップとして海外学生を受け入れる所が急激に増えつつある。大学の国際化の一環として、文部科学省が推奨しているからだ。滞在期間は夏休みを利用してのことが多いので1、2カ月が標準で長くて1年まで。要は海外からの日本短期留学体験だ。私の勤務先でも、間もなくやってくる時期となる。組織に所属している大学院生が30人程度であるのに対し、ほぼ同数ぐらいを受け入れるまでになった。

 インターン希望者は通常、メールで受け入れの可否をこちらの教員に打診してくる。OKが出ればほぼまちがいなく滞在可能である。教員によっては一時期に何人も引き受けるが、私自身は一度も受け入れたことがない。監督責任をとる自信がないからだ。

 考えてもみよう。日本にいる間どう生活するか、何の取り決めもない。インターン学生は受け入れ先に一銭も支払う必要はない。滞在費は原則自腹だが、さまざまな補助を日本側から得ることは珍しくなく、結構恵まれた境遇で自由な暮らしを満喫できる。むろんまじめに勉学に励む学生も少なくないが、勝手にバイトにいそしむ者も同じぐらい珍しくないようだ。そういうインターン学生がいったい全体でどれだけいるのか、おそらく行政も把握していないと思われる。留学生30万人計画を掲げた文科省からすればともかく「来る者は拒まず」のようである。

 先月、東京福祉大学の外国人「研究生」が大量に行方知れずになっていることが判明した。産経の主張(3月19日付)などメディアは大学当局の無責任ぶりを批判したが、私からすれば、大学自体は文科省の目指す方向に沿って外国人を受け入れてきただけのことに思えてしまう。不法残留や不法就労の可能性が指摘されるが、それを言うならインターン生はどうか。

 私は、学内の研究室に無数にある、おおむねセキュリティーの甘いサーバーに侵入しては自分の学問的関心とは無関係に、中身を片っ端からダウンロードしている東アジアからのインターン生を複数、知っている。個々には断片的な内容でもジグソーパズルのようにつなぎ合わせると、結構機密性の高い情報が得られることも珍しくないだろう。

 科学技術情報のダダ漏れが起きていることに、ほとんど誰も気づいていないらしい。せめてマスコミには、大学で実際に何が起きているかを自分たちの手でじかに取材することを希望する。

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 【プロフィル】正高信男

まさたか・のぶお 昭和29年、大阪市生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了。学術博士。専門はヒトを含めた霊長類のコミュニケーションの研究。