なぜ若者はイッキ飲みするのか

 平成28年に開かれた合宿の飲み会では、急性アルコール中毒の疑いで参加者が救急搬送されていた。また、普段から飲み会では、酔いつぶれた学生を介抱したり店内を清掃したりする役割を担う「はけさし」と呼ばれる学生を事前に決めていた。名前の意味は不明だが、酔いつぶれる前提の飲み会が日頃から開かれていたことがうかがえる。

「イッキ」死亡事故、30年前と変わらず

 なぜ、飲み会で一気飲みが行われるのか。

 昭和50年代後半、テレビのバラエティー番組などの影響で、かけ声とともに酒の一気飲みが大流行した。60年には「イッキ!イッキ!」が日本流行語大賞になった。

 若者の飲酒事故が社会問題化したのもこの頃。飲酒事故問題に取り組むNPO法人「ASK(アスク)」によると、59年には3人の大学生の死亡が報じられ、平成3年には5人の大学生が急性アルコール中毒などで亡くなったという。

 30年ほどたった現在でも飲酒による事故は減っているわけではない。昨年の飲酒による大学生や新社会人らの死者は少なくとも5人。東京都内では、一昨年に飲酒による救急搬送者数が過去最高を更新した。

 アスクの今成知美代表は「大学生のサークルなどでは、みんなで酔いつぶれた『武勇伝』などが伝統として脈々と受け継がれることがある」と指摘。「大学も『学生の自治』を理由に、近年まで一気飲みの危険性などについて積極的には周知をしてこなかった」と話している。

会員限定記事会員サービス詳細