有権者不在の数合わせと批判されても仕方あるまい。
国民民主党の玉木雄一郎代表と自由党の小沢一郎代表が26日、合併の合意書に署名した。
国民民主党が解散する自由党を吸収合併し、党名は国民民主党のままで基本政策も引き継ぐ。国民から見れば自由党の丸呑(の)みである。
合併すれば衆院40人、参院24人の計64人で、79人の立憲民主党に次ぐ野党第二党となる。
夏の参院選に向け、野党共闘の加速を狙ったのだろう。合意書では安倍晋三政権との対立軸を明確に示すとしており、政界に緊張感を高める効果は少なくない。
だが、参院選対策の単なる数合わせだとしたら、これほど有権者を愚弄したものはない。どんな政策を最優先に実現していくのかを具体的に示さねば、国民の信頼を得ることは容易ではなかろう。
もちろん、参院選での野党共闘に向けすべての政策を一致させるのは困難だ。小異を捨てて大同につく発想も必要かもしれない。
だとしても、今回の合併合意は理念と政策の一致による合併にはほど遠く、大型連休前にバタバタと合併ありきで合意した印象は拭えない。実績のない野党に、理念や政策を説かれても、多くの国民はピンとこないのではないか。
合意書は、理念・基本政策の一致を前提に野党勢力の結集を呼びかけている。だが、合流後の国民民主と他党との理念・基本政策の一致を探る前に、国民民主と自由の両党すら理念・基本政策で一致しているとは言い難い。
例えば原発政策で、電力総連の支援を受ける国民民主は安全基準を満たした原発に限り、再稼働を認めている。自由はそもそも再稼働に反対だ。10月の消費税率10%引き上げをめぐっても、国民民主は軽減税率導入に批判を向け、自由党は増税そのものに反対だ。
国民民主結党の経緯を振り返れば、民進党による希望の党への丸ごと合流が失敗し、野党第一党の分裂劇を招いた結果の誕生だ。安全保障政策などの違いが踏み絵となった。その轍(てつ)を踏まないためにも、野党間で具体的な政策のすり合わせは欠かせない。
資金力のある国民民主に選挙戦略に通じた小沢氏が加わった。立憲民主と主導権争いが激しくなる可能性があるが、数合わせだけでは有権者の理解は得られまい。